遺伝子は多くの人類疾患の内因性要素であり、病気に関する遺伝子研究は生命医学研究分野の主流である。病気に関する遺伝子及びこれらの遺伝子の概況をどのように迅速に把握するか?大量の文章を読み情報を収集し、スクリーニングするのは時間が必要である。そのため、サイヤジェン株式会社の新たなコラム「Gene of the Week」が毎週オンラインで情報を紹介することになりました。研究者様が毎週遺伝子を1つ把握させるために、毎週遺伝子を1つご紹介します。少しでもお役に立てたのであれば幸いです。本日ご紹介するのは免疫研究人気標的IL2RG。
IL2Rg概要
インターロイキン2受容体γ鎖(interleukan 2 receptor subunit gamma chain、IL2Rg、或はCD132)は、複数の重要な免疫性因子(IL-2、I-7、IL-9、IL-15、IL-21など)の共同受容体サブユニットであるため、共同受容体γ鎖(common gamma chain、γc)とも呼ばれる。IL2Rgは、ほとんどのリンパ細胞の表面に発現する糖タンパクで、哺乳動物の中では、IL2Rg遺伝子はX染色体に位置する。
図1. IL2Rgは複数の重要な免疫性因子の共同受容体サブユニット[1]
IL2Rgファミリー細胞因子
IL2Rgファミリーの細胞因子(IL-2、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21)は異なる生物学的作用を持ち、機体の免疫システムにおいて重要な役割を果たしている。
IL-2
発現細胞:T細胞、DC
機能:
■Th1、Th2、Th9の分化を促進する;Th17とTfhの分化を抑制する。
■T細胞とNK細胞の増殖を誘導する
■Tregの分化と機能を強化する
■免疫療法で抗がん力がある
IL-4
発現細胞:T細胞、NKT細胞、好塩基球、肥満細胞
機能:
■B細胞の分化と免疫グロブリンの アイソタイプスイッチ(Ig isotype switching)を促進する
■Th2とTh9の分化を促進する
■組織常駐型マクロファージの増殖を促進する
■抗蠕虫感染
IL-7
発現細胞:間質細胞、上皮細胞、繊維芽細胞
機能:
■T細胞の発育と安定に必要
■メモリCD8+T細胞の発育を促進する
■ラットB細胞の発育には大切ではあるが、ヒトB細胞の発育には必ずしも必要ではない
IL-9
発現細胞:間質細胞、上皮細胞、繊維芽細胞
機能:
■肥満細胞の増殖を促進する
■杯状細胞(goblet cell)の粘液(mucus)生成を促進する
■抗腫瘍
IL-15
発現細胞:単核球、DC、上皮細胞
機能:
■NK細胞の発育、増殖、生存に重要
■メモリCD8+T細胞の発育を促進する
■免疫療法ではCD8+T細胞とNK細胞を通して抗がん力がある
IL-21
発現細胞:CD4+T細胞、NKT細胞
機能:
■B細胞の形質細胞への分化を促進し、Igの生成を促進する
■CD8+T細胞とNK細胞を通じて抗がん力がある
■Tfh細胞の分化と胚中心(germinal center)の形成を促進する
■Th17の分化を促進する
■Th9の分化を抑制する
■自己免疫性疾患の促進(1型糖尿病、全身性紅斑性狼瘡、実験的脳脊髄炎、結腸炎)
*DC:樹状細胞(dendritic cell);Th:ヘルパーT細胞(T helper);Tfh:濾胞性ヘルパーT細胞(T follicular helper)
IL2Rgの欠陥/欠失
人体の中で、γcの突然変異によって、 X連鎖重症複合免疫不全(X-linked severe combined immunodeficiency,X-SCID)が生じ、T細胞とNK細胞が欠失する。B細胞の数は正常であるが、機能の欠陥[2]がある。X-SCIDはX連鎖劣性遺伝で、患者の大部分は男性で、女性は多くキャリアで、新生児の中の発病率は大体1:50,000~100,000。X-SCID患者の成長が遅れ、免疫系の重度不全のため、病原微生物に感染しやすい。通常、X-SCIDの新生児の多くは2歳まで生きることしかできないが、現在は幹細胞移植と遺伝子療法が有効であることが証明されている。
特に、マウスの中では、通常、PrkdcSCID突然変異またはRag 1/2ノックアウトを通じて、マウスに効果のあるT、B細胞を欠けさせる。さらに、IL2Rgのノックアウトを行い、マウスのT、B細胞を不全があるようにさせながら、成熟したNK細胞も欠けさせる。そうすることで、ヒト化細胞と組織の移植効率が著しく向上し、免疫不全マウスの寿命(NOD-SCIDマウス:約37週間;NOD-SCID-II 2 rg-/-ラット:90週強[4])と実験ウィンドウ期間も伸びた。
図2.NK細胞の発育と機能を発揮するために必要な細胞因子[5]
HSCから発達したNK細胞は、胎児肝、骨髄、胸腺の中で様々な細胞因子によって制御される。NK細胞における異なる細胞因子受容体の時間的発現は、NK細胞の機能的成熟を示している。また、HSCの増殖と分化には、FL、KL、IL−3およびIL−7が必要となる。IL-15は、NK細胞がCLPから成熟したNK細胞に分化するために欠かせない細胞因子である。成熟したNK細胞はまた異なる組織環境からの異なる細胞因子の影響を受ける。
*FL:Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(fms-like tyrousine kinase 3 ligand);KL:Kitリガンド(kit ligand);IL:インターロイキン(interleukin);HSC:造血幹細胞(hematological stem cell);CLP:リンパ球系共通前駆細胞(common lymphoid progenitor);TGF-β, 形質転換増殖因子-β(transforming growth factor-β)。
IL2Rgファミリー細胞因子がCAR-T細胞療法における応用
CAR-T細胞療法(Chimeric antigen receptors T cell therapy)は現在も腫瘍免疫療法において大人気。初代のシンプルなデザインから現在の第四世代まで、CAR-T細胞療法は常に最適化されている。その中で、第4世代CAR-TはTRUCK(T cells redirected for antigen‐unrestricted cytokine‐initiated killing)とも呼ばれ、第2/3世代のデザインに基づいて、人の細胞因子を発現する。例えば、γcファミリー細胞因子のIL-7、IL-15、およびIL-21等は、CAR-T細胞の腫瘍環境における殺傷作用を強める。現在、第4世代CAR-T細胞療法は既にいくつかの固形腫瘍(例えば、神経芽細胞腫)の臨床試験に使われている。
図3. CAR-Tの発展[6]
初代CAR-Tのデザインはシンプルで、細胞外ドメインは単鎖可変領域フラグメント(single-chain variable fragment,scFv)で、細胞内にはCD3ζというシグナル伝達を担当しているタンパク質ドメインしかない。第二世代CAR-Tは、第一世代に基づいて、細胞内ドメインに共刺激ドメインを導入して、通常はCD28であるが、OX40または4-1BBを導入する場合もある。第三世代CAR-Tは2つの共刺激ドメインを持っている。第4世代CAR-Tは第2/3世代のデザインに基づいて、活性化T細胞核因子の転写因子(nuclear factor of activated T cell,NFAT)を発現することで、CAR-T細胞を腫瘍環境内で特定の細胞因子を分泌させることができる。
まとめ
IL2Rgは複数の重要な免疫性因子の共同受容体サブユニットであり、免疫システムにおいて重要な役割を果たしている。人体の中で、その突然変異はあるいは欠失で、深刻な免疫疾患を招くかもしれないが、IL-2Rgが多種類の免疫細胞の発育、分化、増殖における重要性を利用して、マウスのIl2rg遺伝子をノックアウトして、免疫不全マウスを作製し、免疫腫瘍学などの研究に使用する。また、IL-2Rgファミリーの細胞因子(IL-2、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21)は、免疫システムの制御において重要なシグナル因子でもあり、第4世代CAR-Tも含む複数の免疫治療分野に広く使われている。
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C-NKG
品系作製策略:
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品系の説明:
研究応用:
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☑ 同種腫瘍移植モデル(Syngenic)
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参考文献:
[1] Spolski R., Gromer D., Leonard W.J. The γ c family of cytokines: fine-tuning signals from IL-2 and IL-21 in the regulation of the immune response. F1000Res 23;6:1872(2017).
[2] Rochman Y, Spolski R, Leonard WJ. New insights into the regulation of T cells by gamma(c) family cytokines. Nat Rev Immunol. 9(7):480-490 (2009).
[3] Tasher D, Dalal I. The genetic basis of severe combined immunodeficiency and its variants. Appl Clin Genet. 5:67-80 (2012).
[4] Zhou Q., Facciponte J., Jin M., et al. Humanized NOD-SCID IL2rg–/– mice as a preclinical model for cancer research and its potential use for individualized cancer therapies. Cancer Lett. 1;344(1):13-19 (2014) .
[5] Wu Y., Tian Z., Wei H. Developmental and Functional Control of Natural Killer Cells by Cytokines. Front Immunol. 4;8:930 (2017).
[6] Skorka, K., Ostapinska, K., Malesa, A. et al. The Application of CAR-T Cells in Haematological Malignancies. Arch. Immunol. Ther. Exp. 68, 34 (2020).
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