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「Weekly Research Models」Calcaノックアウトマウスにつき

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2021年11月19日

疾患動物モデルは人類疾患の発生発展メカニズムの研究、薬物選別及び治療効果評価に必要なツールであり、良い疾患動物モデルは新薬の研究開発を加速することもできます。まだマウスモデルの選択と構築に悩んでいますか?サイヤジェンの新しいコラム「Weekly Research Model」は掲載されました。毎週月曜日に更新し、1つの疾患マウスモデルの物語を語り、皆様が異なる疾患マウスモデルを理解することにお役に立てれば幸いです。

本日ご紹介するのは、Calcaノックアウトマウスです。

 

Calca遺伝子とは

この遺伝子は、遺伝子転写産物のRNA選択的スプライシング、不活性な前駆体タンパク質の切断により、ペプチドホルモンであるカルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、カタカルシトニンをコードしています。カルシトニンは、カルシウムの調節に関与し、リンの代謝を調節する役割を担っています。カルシトニン遺伝子関連ペプチドは、血管拡張剤や抗菌ペプチドとしての機能を有し、カタカルシトニンはカルシトニン・ペプチドの一種です。

CGRPは中枢と末梢神経系に広く発現しており、末梢血管拡張、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)の合成、精巣下降、侵害受容、炭水化物代謝、胃腸運動、神経因性炎症と胃酸分泌など、さまざまな生理的プロセスに関与しています、

 

図1. CALCA遺伝子は、カルシトニンとα−カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を組織特異的に産生する[1]

 

Calca遺伝子ノックアウトマウスの表現型

Hoffらは、相同組換えによりNeoをCalca遺伝子の2-5番エクソンに置換し、遺伝子欠損の目的を達成しました。[2]

 

図2. Calca遺伝子欠損マウスの作製[2]

 

1 カルシウムの代謝

ホモ接合型ノックアウト(KO)と野生型(WT)マウスとの間で、血清カルシウム、イオン化カルシウム、リン、完全な副甲状腺ホルモン(PTH)、チロキシン、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25-D3)は違いがありません。

 

表1.雌マウスのカルシウム代謝パラメーターのベースライン生化学的分析[2]

 

KOマウスとWTマウスにhPTH(ヒト副甲状腺ホルモン、0.5μg/g体重)を投与:KOマウスではhPTH投与の2時間後と4時間後に血清カルシウムと尿中デオキシピリジノリン(DPD)濃度が有意に上昇したが、WTマウスでは有意な変化が見られなかった(図3a)。実験に並行して血清カルシトニン(CT)を測定した結果、WTマウスでは血清CTが有意に増加したが、KOマウスでは血清CTの増加は見られなかった(図3b)。これに対する合理的な説明の一つは、WTマウスにPTHを投与して血清CTを増加させたことで、破骨細胞による骨吸収とそれに伴う血清カルシウム濃度の上昇を抑制することです。hPTH注射の直前に投与量10~100pg/gのCT前処理を行うと、PTHによる血清カルシウム濃度の上昇を抑制し(図3c)、高カルシウム血症反応を防ぐことができます。

 

図3. 副甲状腺ホルモン刺激による骨吸収は、KOマウスで高カルシウム血症を引き起こし、CT投与によって阻止されます[2]

 

2 骨のX線撮影と組織形態測定

椎体と脛骨のX線撮影により、1ヶ月齢と3ヶ月齢の雌のKOマウスの方が、同齢の雌のWTマウスよりも骨密度が高いことが示されました。組織学的解析では、雌のKOマウスでは、1ヶ月齢と3ヶ月齢で椎骨の海綿体の体積が有意に増加し、3ヶ月齢で脛骨の近位海綿体の体積が有意に増加したことが分かりました(図4a)。組織形態学的分析により、KO雌マウスでは、骨量と海綿体の数が有意に増加していることが確認されました(図4b)。WTマウスとKOマウスでは、海綿体の厚さが同じでしたが、KOマウスでは海綿体の間隔が有意に減少しました。

 

図4.カルカ遺伝子KOはマウスの骨の増加をもたらします[2]

 

3 感染モデル

2013年のある研究では、Calcaノックアウトマウス(KO)とWTマウスに肺炎連鎖球菌または緑膿菌で感染させ、滴定濃度でWTマウスの20~80%が死亡し、その結果、KOの生存率はWTマウスに比べて検出可能な増加または減少が見られました。肺炎連鎖球菌に感染したKOマウスの多くは3日目に死亡し、緑膿菌に感染したマウスの多くは2日目に死亡し、少数は4日目に死亡し、全生存期間は7日です。グラム陽性菌(肺炎連鎖球菌)に感染した場合、7日間の生存率は、WTマウスで3/13(23%)、KOマウスで3/14(21.4%)です。グラム陰性菌(緑膿菌)に感染した場合、7日間の生存率は、WTマウスで2/10(20%)、KOマウスで2/11(18.2%)です。グラム陽性菌またはグラム陰性菌のいずれの肺炎感染においても、WTマウスとKOマウスの間に生存率の有意な差はありません。

 

図5. 野生型(WT)とCalcaノックアウト(KO)マウスの肺炎感染に対する反応[3]

 

肺炎連鎖球菌感染24時間後、WTマウスの血清カルシトニン・プロカルシトニン(CT/PCT)免疫反応は2.1倍に増強されましたが、KOマウスでは検出されませんでした。この研究では、またCTの標準的なラジオイムノアッセイを採用して、サンプルに対して分析を行いました。その結果、WTマウスのベースライン時に血清CT/PCT免疫反応性を検出することができ、副甲状腺ホルモン刺激後に4.4倍上昇し、肺炎連鎖球菌感染24時間後2.6倍上昇しましたが、KOマウスでは、いずれの条件でも血清CT/PCT免疫反応は検出されませんでした。

 

図6. 野生型(WT)とCalcaノックアウト(KO)マウスの肺炎感染に対する反応[3]

 

上記のデータは、感染と炎症期間中に非内分泌系PCTの発現が比較的に低いため、KOマウスは敗血症の発病機序におけるの役割を検証するための理想的な機能喪失モデルではないことを示しています。

研究の結果、Calca遺伝子は生殖に必要ではなく、その欠失はいかなる重度の発達障害とも無関係で、基礎的なカルシウムや他のミネラルの定常状態に影響を与えないようであることが分かりました。しかし、注意深く観察すると、正常な骨とミネラルの定常状態におけるCTの役割を発見することができます。欠損マウスでは、外因性PTH投与に対する反応性が高まりました。さらに分析すると、破骨細胞数や骨吸収マーカー(DPD)には差が見られませんが、骨形成率は有意に上昇しました。KOマウスでは、予想外の骨形成の増加が見られたことから、Calca遺伝子産物の骨形成調節への作用が認識されていなかったことを示唆しています。骨折患者の多くが骨再生不全に陥っていることを考えると、骨折治癒をメカニズムレベルで理解し、主に骨再生に影響を与えるメディエーターを特定することは、臨床的にも科学的にも非常に重要です。CGRP受容体が細胞表面に結合し、それが優れた薬物標的となることから、選択的CGRPアゴニストは骨折治癒のために薬理学的アプローチとなる可能性があります。[4]

 

参考文献:

(1) Raynaud A, Cohen R, Modigliani E. Le peptide alternatif du gène de la calcitonine (CGRP) [Calcitonin gene-related peptide (CGRP)]. Presse Med. 1994 Feb 5;23(4):171-5. French. PMID: 8177860.

(2) Hoff AO, Catala-Lehnen P, Thomas PM, Priemel M, Rueger JM, Nasonkin I, Bradley A, Hughes MR, Ordonez N, Cote GJ, Amling M, Gagel RF. Increased bone mass is an unexpected phenotype associated with deletion of the calcitonin gene. J Clin Invest. 2002 Dec;110(12):1849-57. doi: 10.1172/JCI14218. PMID: 12488435; PMCID: PMC151647.

(3) Tuvim MJ, Clement CG, Huang ES, Cote GJ, Evans SE, Lei X, Deftos LJ, Gagel RF, Dickey BF. Deletion of the gene encoding calcitonin and calcitonin gene-related peptide α does not affect the outcome of severe infection in mice. Am J Respir Cell Mol Biol. 2013 Jul;49(1):151-5. doi: 10.1165/rcmb.2012-0489OC. PMID: 23526213; PMCID: PMC3727888.

(4) Appelt J, Baranowsky A, Jahn D, Yorgan T, Köhli P, Otto E, Farahani SK, Graef F, Fuchs M, Herrera A, Amling M, Schinke T, Frosch KH, Duda GN, Tsitsilonis S, Keller J. The neuropeptide calcitonin gene-related peptide alpha is essential for bone healing. EBioMedicine. 2020 Sep;59:102970. doi: 10.1016/j.ebiom.2020.102970. Epub 2020 Aug 24. PMID: 32853990; PMCID: PMC7452713.

 

サイヤジェン株式会社について

サイヤジェン株式会社は15年間の発展を経て、全世界の数万人の科学研究者にサービスを提供しており、製品と技術は直接にCNS (Cell、Nature、Science)の定期刊を含む5,200余りの学術論文に応用されています。弊社の「ノックアウトマウスライブラリ」は低価格だけでなく、遺伝子名称を入力すれば、ワンクリックで注文まで操作できます。ノックアウトマウスノックインマウスコンディショナルノックアウトマウストランスジェニックマウスGFPマウス免疫不全マウス無菌マウスなどのカスタマイズサービスを提供する以外、専門的な手術疾患モデルチームがあり、多種の複雑な小動物手術疾患モデルも提供できます。

 

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