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【Gene of the Week】神経系発達障害疾患原因遺伝子MeCP2

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2021年10月18日

遺伝子は多くの人類疾患の内因性要素であり、病気に関する遺伝子研究は生命医学研究分野の主流である。病気に関する遺伝子及びこれらの遺伝子の概況をどのように迅速に把握するか?大量の文章を読み情報を収集し、スクリーニングするのは時間が必要である。そのため、サイヤジェン株式会社の新たなコラム「Gene of the Week」が毎週オンラインで情報を紹介することになりました。研究者様が毎週遺伝子を1つ把握できるために、毎週遺伝子を1つご紹介します。少しでもお役に立てたのであれば幸いです。

本日ご紹介するのは神経系発達障害疾患原因遺伝子のMeCP2です。

 

1、遺伝子の基本情報につき

 

Species Human Mouse Rat
Chromosomes X X X
Full-length gene (bp) 76145 59099 63511
mRNA (nt) 10234 10452 10433
Exon 11 5 5
Amino acid 498 484 520
Family members   MBD4  

2、MeCP2遺伝子の研究概況につき

MeCP2は哺乳類の学習能力・記憶力に重要な影響を与え、Rett症候群とMeCP2重複症候群の原因遺伝子でもある。MeCP2は、複数のメカニズムによって遺伝子転写に顕著な影響を与える。また、明確な表現型の学習・記憶動物モデルがあり、学習と記憶の中の遺伝子転写研究の理想的な対象である。MECP遺伝子は主に転写制御機能を発揮する。人類とマウスの中で、この遺伝子はX染色体に位置し、最終的にアミノ酸残基を500個ぐらいエンコードするタンパク質である。この蛋白質はDNAメチル化のサイトと結合し,転写抑制を解除する。Rett症候群はMeCP2の突然変異による失活で生じ、X染色体劣性疾患に属する。MeCP2重複はMeCP2の過剰発現によるもので、X染色体優性疾患に属する。

 

MeCP2は、転写抑制と転写活性化の両方の機能を同時に備えている。一方、MeCP2はメチル化のサイトと結合すると、mSin3A/HDAC補助抑制因子と結合し、メチル化構造をさらに安定させ、遺伝子の転写に対して抑制する。一方、このタンパク質がリン酸化後も、CREBなどの転写活性化タンパクを応募して遺伝子の転写を促進する。

 

図1.MeCP2機能の分子メカニズム。
情報源:10.1101/lm.048876.118.

 

MeCP2遺伝子はX染色体に位置して、その左右に隣接する遺伝子はそれぞれRCPとIRAK遺伝子である。人類とラット・マウスの中で、この遺伝子の機能に著しい影響を与えたのは1~4番のエクソンとその中の3つのイントロン。MeCP2タンパク質は主に5つの部分から構成されている。まずは両端に位置するN末端ドメイン(N-terminal Domain)とC末端ドメイン(C-terminal Domain)。中間は順次メチル化サイトドメイン,中間領域(interdomian)と転写抑制ドメイン。このタンパク質は理論的に53 kdの大きさであるが、翻訳後に一連の修飾がされたため、その分子量は免疫ブロットでほとんどは75 kd。MeCP2はほとんどの組織の中で多少一定的に発現する。その中で高発現の組織は脳、肺と脾臓。相対的に低発現するのは肝臓、心、腎臓、小腸。マウスの脳内で、MeCP2の発現量は嗅球、線条体、皮層、海馬、視床、小脳と脳幹でもっとも高い。MeCP2の主な発現は、最初のエクソンが翻訳されたかどうかによってE 1とE 2の二種類に分類される。

 

図2.MeCP2遺伝子とタンパク質。
情報源:10.1007/s 12017-144-859-9.

 

MeCP2は、初期の胚の発育、ニューロンの成熟と回路の形成においてニューロン分化を制御し、分化と成熟の過程において染色質中心の凝集を促進し、成熟したニューロンの染色質構造の構築に参与する(図中の黒い丸で示されるように、成熟したニューロンの染色質中心が少なく、密集)。成人期において、MeCP2は染色質構造を維持し、ニューロン転写グループを制御し、ニューロン機能を維持するのに重要である。また、MeCP2は、刺激に依存する遺伝子転写に対していつでも待機状態を維持している。すなわち、刺激はMeCP2の分離を促進し、関連する遺伝子の転写開始をもたらし、認知機能を制御する。

図3.MeCP2は脳の発育を制御し、成熟したニューロンの機能を維持する。
情報源:10.3390/ijms 2084577.

 

MeCP2によるRett症候群に対して、遺伝子治療は理想的な治療手段に違いない。しかし、現在も問題が少なくない。静脈注射でMeCP2があるベクターを体内に発現させるとすると、ウイルスベクターの毒性は考慮せざるを得ない問題である。特に肝臓に毒性が集中してしまえば致命的な影響を与える。一方、中枢神経系でMeCP2を発現するには、血液脳関門をいかに乗り越えるかが最大の問題である。直接の頭蓋内注射、くも膜下腔内注射などの方法は血液脳関門の問題を回避できるが、標的は正常なMeCP2を発現するニューロンはないはず。単一のニューロンの中でMeCP2の過剰発現も不利である。

 

MECP2はRett症候群の主な原因遺伝子として、一方では早期にそれに対して抑制して、知力の発育への影響を部分的に緩和することに役が立つが、時間的にはコントロールしにくい。一方、ウイルスベクターにMECP2を搭載したマウスのモデルは明らかな治療効果を持つが、Rettの治療に本格的に応用するにはまだ先が長い。

 

参考文献:

1. Robinson HA, Pozzo-Miller L. The role of MeCP2 in learning and memory. Learn Mem. 2019 Aug 15;26(9):343-350. doi: 10.1101/lm.048876.118. PMID: 31416907; PMCID: PMC6699413.

2. Liyanage VR, Rastegar M. Rett syndrome and MeCP2. Neuromolecular Med. 2014 Jun;16(2):231-64. doi: 10.1007/s12017-014-8295-9. Epub 2014 Mar 11. PMID: 24615633; PMCID: PMC5798978.

3. Gulmez Karaca K, Brito DVC, Oliveira AMM. MeCP2: A Critical Regulator of Chromatin in Neurodevelopment and Adult Brain Function. Int J Mol Sci. 2019 Sep 16;20(18):4577. doi: 10.3390/ijms20184577. PMID: 31527487; PMCID: PMC6769791.

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