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CRISPR技術で作製したゲノム編集マウスにおける予想外の大量突然変異の発現報告について

CRISPRによるゲノム編集技術は、生物学を大きく変える技術として数年前から注目を集めています。CRISPR技術が紹介されてから、多くの研究者達がCRISPR技術を利用して、ゲノム編集動物を作製していますが、目的領域から外れたところまで作用を及ぼす「オフターゲット効果」が技術の問題点として知られています。研究者達は、標的部位への相同性に基づいて、潜在的オフターゲット部位を予測し、シーケンシングで解析する方法によって、オフターゲット効果の問題を緩和しようとしています。これらの分析に基づいて、研究者達は、オフターゲット効果が非常に稀な状況で、また、その影響が制御可能な範囲内にあると考えています。

しかし、Schaeferらの衝撃的な発見は、CRISPR技術の有効性に大きな疑問を持たせました。研究チームによると、CRISPR技術で作製したマウスに全ゲノムディープシーケンシング解析を行った結果、およそ1700の点突然変異が発生したとのことです。驚くべきことに、これら突然変異の大部分は、挿入・削除ではなく、オフターゲット効果のアルゴリズムが予測をしなかった場所で発生したもので、その遺伝子の多くは、タンパク質をコーディングするものとノンコーディングRNAであったとのことでした。興味深いことに、これら観察された点突然変異は、予測されてはいませんでした。また、これら点突然変異の大部分はランダムに発生するのではなく、同じCRISPRとgRNAの処理により作製した異なる個体でも発生するとのことでした。

今回の発見で特に問題となるのは、CRISPRにより作製したマウスの表現型は標的変異によるものか、オフターゲットの変異によるものかを見分けるのが非常に難しいという点です。一般的に、以下2つの方法によって潜在的なオフターゲット効果に対処することができます。一つは、ゲノム編集マウスとワイルドタイプマウスとの戻し交配をして、オフターゲットによる突然変異を除去し、目的領域の編集だけを残す方法です。もう1つの方法は、同じ動物モデルに対し、複数ラインのマウスを作製して、その表現型を確認することでで標的変異を判断する方法です。もし、表現型が同じ場合、この表現型は導入した編集によるものであると判断することができます。しかし、今回の論文によると、これまで使用してきた2つの方法では、CRISPRのオフターゲットによる突然変異の問題を解決することができない状況になっています。

Schaeferらの報告によると、1700の点突然変異と100以上のIndelが存在するとのことです。これほど多くのオフターゲットによる突然変異ですと、単純な計算をしても、染色体一つに対し平均数十箇所以上、分布することになります。また、毎回の交配に置いて毎染色体で相同組み換えが発生する可能性は平均1回もないため、戻し交配によって突然変異の数を減らすとしても、その数は限られていて、これらの突然変異を除去することはほぼ不可能になります。さらにひどいことに、Schaeferらの報告では、これら1700の点突然変異とIndelのほとんどはランダム変異ではなく、同じ場所に変異が存在するとのことです。よって、複数のラインを作製して、表現型を比較することで判断することがほぼ不可能になります。理由としては、異なるラインでも、同じところでオフターゲットによる突然変異が発生する可能性が十分あるからです。当然、全ゲノムディープシーケンシングによってオフターゲット変異の正確な結果は得られますが、大幅な時間と費用がかかる割に、確認ができるのみで、実際にオフターゲットによる突然変異を除去することはできません。

伝統的なES細胞での相同組み換えにより遺伝子改変動物を作製する方法に比べ、CRISPR技術の一番のメリットは、作製期間が早いことと費用が安いことです。しかし、動物に利用できる段階に至るまでには、大量のテストと大幅な時間が必要です。特にコンディショナルノックアウトなど、複雑な編集の場合は、CRISPR技術を利用するとさらにリスクが大きくなりますので、ES細胞の相同組み換えを用いる伝統的な方法が一番信頼できる方法となります。2年前、弊社が発売したTurboKnockout技術(http://www.cyagen.jp/service/tetraone.html)は、2つの重要な技術革新により、従来のES細胞を用いる方法をより短い作製期間と安い価格で利用できるようにしました。また、デザイン案の自動設計システム(www.alphaknockout.com)により、デザイン案の設計を簡素化し、さらに使用しやすくなりました。

 参考文献

  1. Koo T, Lee J, Kim JS. Measuring and Reducing Off-Target Activities of Programmable Nucleases Including CRISPR-Cas9. Mol Cells. 2015 Jun;38(6):475-81.
  2. Zhang XH, Tee LY, Wang XG, Huang QS, Yang SH. Off-target Effects in CRISPR/Cas9-mediated Genome Engineering. Mol Ther Nucleic Acids. 2015 Nov 17;4:e264.
  3. Zischewski J, Fischer R, Bortesi L. Detection of on-target and off-target mutations generated by CRISPR/Cas9 and other sequence-specific nucleases. Biotechnol Adv. 2017 Jan - Feb;35(1):95-104.
  4. Schaefer KA, Wu WH, Colgan DF, Tsang SH, Bassuk AG, Mahajan VB. Unexpected mutations after CRISPR-Cas9 editing in vivo. Nat Methods. 2017 May 30;14(6):547-548.
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