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【Weekly Research Model】重症複合免疫不全マウスの選択肢につき

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2021年9月26日

SCIDマウス、すなわち重症複合免疫不全(server combined immune-deficiency,SCID)マウスは、1980年にBosma博士チームによって初めてC.B-17/Icrマウス(後はC.B-17 SCIDマウスに命名され)の中で発見された。SCIDマウスは16番染色体における劣性遺伝子突然変異(PrkdcSCID)を持つ。Prkdc遺伝子はDNA依存性タンパクリン酸化酵素の触媒サブユニット(DNA-PKs)をコードする。このタンパク質はT、B細胞のT細胞抗原受容体(TCR)、B細胞抗原受容体(BCR)遺伝子のV(D)Jの再配列(図1)に関与している。そのため、SCIDマウスは効果的なT、Bリンパ球に欠けている。ほとんどの同型接合体は検出可能なレベルのIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3またはIgAが不足している。しかも、その胸腺、リンパ節、脾の濾胞はほとんどリンパ細胞がない。

 

しかし、年齢とともに、一部のSCIDマウスには免疫漏出現象(Leakiness)が生じ。マウスの体内には、機能的なT、B細胞と免疫グロブリン(immunoglobulin、Ig)が少量生成される。この現象はnon-SPF条件で飼育されているSCIDマウスの中で発生率がより高い。現在、SCIDマウスが免疫漏出現象を発生する分子メカニズムはまだ明確ではなく、しかも明確な判定基準もない(Jax社は血清Ig含有量>1 ug/mlのSCIDマウスを「leaky」に該当する)。また、このような免疫漏出現象は、遺伝的バックグラウンドの異なるSCIDマウスでの発生率も異る。一般的に、SCIDマウスは、C57BL/6JとBALB/cバックグラウンドでの漏出率が高い。C3Hバックグラウンドでの漏洩率は低い。NODバックグラウンドでの漏出率は極めて低い。

 

図1.V(D)Jの再配列[1]

 

さらに,SCIDマウスは照射に敏感である。照射はDNAの二重鎖切断を引き起こすが、DNAの二重鎖破壊の修復にはDNA-PKが関与していることが知られている(図2)。そのため、PrkdcSCID突然変異のある細胞は、損傷したDNAを効果的に修復できないため、細胞の損傷と死亡を招く。

図2.DNA PKcsがDNAの二重鎖切断の修復に関与[2]

 

T細胞の不全しかないヌードマウスに比べて、SCIDマウスの免疫不全レベルがより高く、腫瘍発生のために必要な腫瘍細胞の接種量及び発生速度において一定の優位性があり、ヒト腫瘍細胞株由来の異種移植(cell dervied xenograft,CDX)と患者由来腫瘍組織の異種移植(Patint-dervid turymor xenograft)などの異種移植をより効果的に移植することができる。また、PrkdcSCID突然変異を異なる遺伝的バックグラウンドのマウスに導入することにより、それぞれ特徴の異なるSCIDマウスを得ることができる(グラフ1)。

グラフ1.異なるSCIDマウスの特徴比較[3-4]
「-」:欠失「+」:正常

 

C.B-17 SCIDマウス

C.B-17 SCIDマウスはBALB/cマウスの同源近交系であり、PrkdcSCID突然変異遺伝子とC57 BL/KaマウスからのIgh-1 b対立遺伝子を持つのを除く、この2種類のマウスの遺伝子はほぼ同じである。C.B-17 SCIDマウスは機能的なT、Bリンパ球を欠けるが、正常なNK細胞、骨髄系細胞と補体免疫機能がある。免疫漏出率が高い。

 

C3H SCIDマウス

C.B-17 SCIDマウスはBALB/cマウスの同源近交系であり、PrkdcSCID突然変異遺伝子とC57 BL/KaマウスからのIgh-1 b対立遺伝子を持つのを除く、この2種類のマウスの遺伝子はほぼ同じである。C.B-17 SCIDマウスは機能的なT、Bリンパ球を欠けるが、正常なNK細胞、骨髄系細胞と補体免疫機能がある。免疫漏出率が高い。

 

SCID Beigeマウス

SCID BeigeマウスはC.B-17 SCIDマウスとbeigeマウスが異種交配して得られた品系である。SCIDの突然変異により、マウスは機能的なT細胞とB細胞を欠ける。Beige突然変異(Lystbg)によりマウスのメラノソームが減少し、NK細胞の機能不全が内因性細胞毒活性の低下と表現され、細胞毒性T細胞とマクロファージ機能不全があり、血小板貯蔵プール(platelet storage pool)が不足ため、止血時間が長い。

 

NOS SCIDマウス

NOS SCIDマウスはNOD(Non-obese diabetic、非肥満性糖尿病)マウスにPrkdcSCID突然変異遺伝子を導入して得られた品系である。NOD SCIDマウスはSCIDマウスの特徴を持つだけでなく、機能的なT細胞とB細胞を欠け、またNODマウスの多種類の免疫不全がある。例えば、補体5(C5)の欠失、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞の機能低下など。また、NOD SCIDマウスは自発性糖尿病がなく、免疫漏れの発生率が低いが、胸腺リンパ腫が発生する可能性があり、寿命はおよそ8~9ヶ月間である。

 

機能的なT、Bリンパ球を欠けるSCIDマウスは、腫瘍免疫研究分野で重要な役割を果たしている。異なる遺伝的バックグラウンドのSCIDマウスはそれぞれ特徴が異なり、研究者に多くの選択肢を提供している。現在SCIDマウスの中で、免疫不全レベルが一番高いのはNOD SCIDマウスである。NOD SCIDマウスでは、研究者は研究ニーズに応じて様々な遺伝子改変を行う。例えば、IL2Rgのノックアウトを行い、マウスに機能性NK細胞を欠けさせ、マウスの免疫不全レベルを高めて、異種の細胞・組織の移植率(例えばNKG、NSG、NOGマウスなど)を促進する。また、SCIDマウスの免疫漏れや照射に敏感なことなどから、研究者は同じくV(D)J再配列に重要な役割を果たしているRag 1やRag 2タンパク質に注目している。Rag 1とRag 2は、DNA-PK上流で機能を発揮し、再結合信号シーケンス(recombination signal sequence, RSS)の識別と切断を担当している。それらが欠けるとV(D)J組み換えが起動できない。このため、Rag 1とRag 2ノックアウトマウスが機能的なT、B細胞を欠けると同時に、免疫漏れが発生しない。また、Rag 1とRag 2はDNAの二重鎖切断の修復に関与しないため、マウスは照射に敏感ではない(例えば、Rag 1 KO、BGSFマウスなど)。

 

サイヤジェンのSCIDマウスに関し、免疫不全マウスは腫瘍研究をサポートする NOD scid

表現型情報につき:

☑ 独自の複数免疫不全はヒト造血幹細胞の復旧に極めて優れたシステムを提供し、HIV-1研究と遺伝子治療の重要なモデルとなる。

☑ 腫瘍研究の重要なツールであり、特にリンパ腫と胸腺腫等、腫瘍の発生率を向上する可能である。

☑ 致死的な胸腺リンパ腫を移植する場合には寿命が短いである。

研究応用につき:

☑ 同種移植と異種移植、腫瘍細胞の増殖、侵襲と転移の潜在力、および抗癌治療法の効果の評価に使用可能である。

☑ 腫瘍免疫学および炎症の研究につき

☑ 糖尿病と肥満に関する研究につき:I型糖尿病

☑ 血液学研究(例えば白血病)につき

 

サイヤジェン薬物選別評価マウスプラットフォームはNOD scidを提供できる以外、BALB/c nude(ヌードマウス)とC-NKG及びヒト免疫系再構築マウスなども提供でき、研究者様の新薬開発をサポートいたします。

 

サイヤジェン薬物選別評価マウスプラットフォームはNOD scidを提供できる以外、BALB/c nude(ヌードマウス)とC-NKG及びヒト免疫系再構築マウスなども提供でき、研究者様の新薬開発をサポートいたします。

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