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【Gene of the Week】特発性肺線維症の重要な致命的な肺疾患である−Cav1

Cyagen Technical Content Team | November 17, 2021
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目次

目次

01 CAV-1遺伝子の概要 02 特発性肺線維症とは(IPF) 03 IPF関連マウスモデルについて 04 特発性肺線維症の治療について 05 まとめ

CAV-1遺伝子の概要

Cav1遺伝子は、Caveolin-1(CAV-1)タンパク質をコードする役割を担っています。このタンパク質はカベオリン-1とも呼ばれており、キメラタンパク質Caveolinファミリー・メンバーの一つです。このタンパク質ファミリーには、Caveolin−1、Caveolin−2、Caveolin−3という3種類のタンパク質が含まれています。そのうち、CAV-1タンパク質は178個のアミノ酸からなっており、CAV-1αとCAV-1βという2種類の異性体があります。遺伝子の局在については、ヒトゲノムにおいてCAV-1遺伝子は7番染色体に位置しており、マウス染色体6E1領域に対応しています。CAV-1タンパク質の相対的な分子量は約21,000~24,000です[1]。

また、CAV-1タンパク質は多機能な膜シグナル伝達・タンパク質です。現在、CAV-1がGタンパク質、チロシンキナーゼを含む様々なシグナル伝達に関与していることが明らかになっています。最近の研究結果から、CAV−1はTGF−βシグナル伝達経路を調節することで細胞外マトリックス(ECM)の産生を促進し、炎症抑制効果をもたらし、最終的に線維化を促進することが示唆されています。

性状

Caveolin-1

Caveolin-1

Caveolin-1

分子量

21-24kD

20kD

17.2 kD

アミノ酸

178

162

151

染色体の局在

7q31.1

7q31.1

3P25

Cav-1との類似性

100( 100)

58(38)

85(65)

Cav-1との類似性

59( 40)

100(100)

60(39)

オリゴマー化

+

+ /—

+

パルミトイル化

+

?

+

形成への関与Caveolae

+

—

+

分布状況

上皮細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、肺胞細胞

Cav-1と類似

骨格筋、平滑筋、心筋細胞、アストロサイト(星細胞)、軟骨細胞

表1.Caveolinファミリー・メンバー間の比較[1]

特発性肺線維症とは(IPF)

特発性肺線維症(IPF)とは、原因不明の進行性肺線維症で、炎症性の損傷を伴います。臨床現場では、呼吸困難、咳、肺機能の低下が主な症状です。その発病機序は、主に肺胞上皮細胞の損傷、線維芽細胞の異常沈着、肺の異常修復に関係しており、主として肺間質の異常増殖、肺胞の単純化、肺胞壁の肥厚などの病理学的特徴が現れ、患者の肺容積の縮小、肺コンプライアンスの低下を招き、しかも線維化プロセスはほとんど不可逆反応です[4]。患者の生存率は低く、通常、特発性肺線維症と診断されてから3~5年後に死亡します[5]。

現在、CAV-1とIPFの間に密接な関係があることが多くの研究で報告されており、特にCAV-1の欠損はIPFの発症に対して極めて重要な役割を果たす。一方、CAV-1のアップレギュレーションは、IPFの発症・進行を防ぐことができることから、今後、CAV-1はIPFの潜在的な治療ターゲットとなる可能性があります。

IPF関連マウスモデルについて

現在、最も典型的で一般的なIPFモデルは、ブレオマイシン誘導性の損傷モデルです。ブレオマイシンは、様々な腫瘍に対して殺傷効果を持つ抗腫瘍薬で、多くの場合、様々な線維化モデルの誘導によく用いられます[6]。肺線維化マウスモデルにおいて、ブレオマイシンは様々な線維化関連遺伝子の発現を効果的にアップレギュレートし、関連経路を活性化し、線維化プロセスを模倣することが可能です。

マウスのブレオマイシン誘導肺損傷後の各時点におけるにおけるCAV-1発現の変化を調べた研究があります。その結果、このモデルでは、損傷後7日目から10日目にかけて線維化が見られ、損傷後14日目頃に繊維化の程度がピークに達することが分かりました。この研究では、損傷後5日目(炎症が比較的活発な時期)、7日目(線維化が進んだ時期)、12日目(線維化がピークに達した時期)、28日目(線維化が治まった時期)にCAV-1の発現を測定しました。その結果、全肺ライセートにおけるCAV-1タンパク質の発現は、肺損傷後5日目、7日目、12日目に有意に低下し、28日目には回復することが分かりました[7]。CAV-1の発現低下がどの細胞集団に由来するのかをさらに調べるために、Linらは肺胞内の異なる細胞集団マーカーの免疫蛗光特異的染色を行い、研究の結果、ブレオマイシン誘導損傷マウスモデルでは、CAV-1の発現低下が主に肺胞のI型上皮細胞に集中していることを示しました[8]。

マウスのブレオマイシン誘導肺損傷に対応するCAV-1発現の低下

図1. マウスのブレオマイシン誘導肺損傷に対応するCAV-1発現の低下[7]

ブレオマイシン誘導損傷後、主にI型肺胞上皮細胞におけるCAV-1の発現量が低下しました

図2. ブレオマイシン誘導損傷後、主にI型肺胞上皮細胞におけるCAV-1の発現量が低下しました[8]

実際、CAV-1の抗線維化作用は多くの研究で認められていますが、CAV-1-/-マウスがブレオマイシン誘導損傷後に線維化が抑制されるという研究報告もあることから[9]、CAV-1とIPFとの関係についてはまだ明確な結論が得られていません。また、CAV-1欠損マウスでは、正常に制御されていない内皮細胞の増殖、線維化による肺胞中隔の肥厚、免疫不全を示すことが報告されています[10]。これらの研究はすべて、CAV-1とIPFの間に密接で複雑な関係があることを示しています。

特発性肺線維症の治療について

2014年に、2種類のIPF治療薬剤は米国食品医薬品局で承認されましたが、IPFを元に戻す効果は依然として低く、米国でも両薬剤の使用率は極めて低いと分析されています。上記の通り、IPFに対する有効なインターベンション治療方法はまだありません。唯一有効と思われる治療方法は肺移植です。そのため、IPFの治療ターゲットや潜在的な薬剤の開発は、科学的な課題で、注目されている話題となっています。

最近の研究では、CAV-1過剰発現プラスミドを肺胞細胞にエレクトロポレーション法で導入すると、ブレオマイシンによる肺線維症の軽減に効果があり、また、損傷による好中球やマクロファージのリクルートも弱まることが分かりました[8]。この治療方法は指向性トランスフェクションにより、CAV-1過剰発現プラスミドを正確に肺部に送達し、外科的創傷やその他の組織・器官への影響を避けることができます。

CAV-1過剰発現プラスミドを肺胞細胞にエレクトロポレーション法で導入することで、ブレオマイシン投与21日目のマウスの肺炎症小胞体の活性化を効果的に抑制することができます

図3. CAV-1過剰発現プラスミドを肺胞細胞にエレクトロポレーション法で導入することで、ブレオマイシン投与21日目のマウスの肺炎症小胞体の活性化を効果的に抑制することができます[8]

まとめ

CAV-1がマウスやヒトの特発性線維症に不可欠な重要な役割を果たしていることを示す証拠がますます多くなっています。特にCAV-1のアップレギュレーションによる線維化進行の抑制は、今後のIPFの予防と治療に対して全く新しい考え方を提供しているもので、さらには現在、CAV-1の誘導ペプチド(Caveolin-1-derived peptide)がブレオマイシン誘導のマウス肺線維症を効果的に抑制することが証明された研究報告があります[11]。この研究結果は間違いなくCAV-1をIPFの治療ターゲットとして新たな段階に押し上げ、近い将来、CAV-1をターゲットとした治療方法が広く使われるようになるかもしれません。

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