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自己免疫疾患・炎症

huC5AR1ヒト化マウスモデル:炎症、神経炎症および腫瘍研究を支援する前臨床ツール

Cyagen Technical Content Team | May 27, 2026
HUGO-GT™:ヒト化マウスモデルに革新を
独自のTurboKnockout-Pro技術を基盤とするHUGO-GT™モデルにより、精密なゲノムワイド・ヒト化の知見を活かして創薬を加速し、前臨床試験における精度と信頼性を高めます。
HUGO-GT™:ヒト化マウスモデルに革新を
目次
01 C5AR1創薬の最新動向と前臨床評価の課題 02 C5AR1標的の概要とシグナル伝達 03 単一疾患から幅広い適応へ:高まるアンメットメディカルニーズ 04 huC5AR1ヒト化マウスモデル 05 結語:C5AR1創薬を加速するために 06 ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas 07 Cyagenについて 08 FAQ

C5AR1創薬の最新動向と前臨床評価の課題

補体C5a受容体1(C5AR1、C5aR1、CD88とも呼ばれます)は、補体系における重要なGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、好中球性炎症を制御する中核的な分子標的として長年注目されてきました。2025年10月、BiogenはVanqua Bioが創製した前臨床段階の経口・末梢選択的C5AR1アンタゴニストについて、最大10.6億米ドルの総取引額で全世界における独占的権利を取得しました[1]。この大型ライセンス契約は、C5AR1を標的とする創薬に対して、大手製薬企業が引き続き高い期待を寄せていることを示しています。

Biogenによる経口C5aR1アンタゴニストの全世界権利取得を示す図

図1. Biogenは経口C5aR1アンタゴニストの全世界権利を取得し、免疫領域パイプラインを拡充[1]。

2026年5月現在、相次ぐ臨床データの公表により、C5AR1領域で求められる差別化ポイントも明確になりつつあります。avacopan(Tavneos®)は、初めて承認された経口C5AR1アンタゴニストとして、ANCA関連血管炎(AAV)におけるステロイド減量を可能にした画期的な治療選択肢です。一方、2026年3〜4月にFDAが肝障害リスクに関する警告を発表したことで、市場には慎重な見方も広がりました[2]。これにより、後続品では安全性、とりわけ肝毒性リスクの低減が競争力を左右する重要な要素として、改めて浮き彫りになっています。

一方、InflaRxのIzicopan(INF904)が2026年5月に発表したデータは大きな注目を集めました。CYP3A4に対する時間依存的阻害は認められず、反応性代謝物の生成も少ないことから、肝毒性リスクを抑えられる可能性が示されています。これまでの第2a相試験で得られた良好な結果も踏まえると、Izicopanは「肝毒性」という課題を回避し得るbest-in-class候補として期待されています[3]。さらにBiogenは現在、Izastobart(抗C5AR1モノクローナル抗体)と経口低分子プログラムを並行して進めています。低分子薬と生物製剤の二軸で展開するこのアプローチは、好中球性炎症における中核標的としてのC5AR1の戦略的価値を一段と裏付けるものです。

C5AR1標的薬の主な開発パイプラインをまとめた概略図

図2. C5AR1標的薬の主なパイプライン概略。

炎症性疾患の負担が世界的に増すなか、安全性と有効性に加え、服薬しやすく長期継続しやすい治療選択肢へのニーズが高まっています。一方で、C5AR1創薬には特有の課題もあります。ヒトC5AR1とマウスC5AR1ではタンパク質配列や立体構造に顕著な違いがあるため、in vitroで優れた特性を示すヒト特異的抗体や低分子化合物であっても、野生型マウスでは親和性、薬物動態/薬力学(PK/PD)、in vivo薬効、安全性を正確に評価できない場合があります。この種差は、IND申請や臨床応用に向けた開発上の重要なボトルネックとなります。肝毒性への懸念と開発競争の激化が同時に進むなか、差別化されたパイプラインをより迅速かつ確実に前進させるには、ヒト化モデルを用いた評価が欠かせません。

C5AR1標的の概要とシグナル伝達

C5AR1は、典型的な7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、主に好中球、マクロファージ、単球などの骨髄系免疫細胞の表面に高発現しています。内因性リガンドであるC5aは、補体系の活性化に伴って産生される強力なアナフィラトキシンであり、「炎症増幅因子」とも位置づけられます。C5aがC5AR1に結合すると、Gi/oタンパク質シグナル伝達経路を介して、好中球の遊走、脱顆粒、活性酸素種(ROS)産生、好中球細胞外トラップ(NETs)形成が迅速に誘導されます。さらに、NF-κBおよびMAPK経路を活性化し、IL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインの放出を促すことで、血管障害や組織線維化の進展に関与します[4]。

C5a受容体シグナル伝達経路を示す模式図

図3. C5a受容体シグナル伝達[5]。

このように、C5AR1は炎症反応の上流で作用するため、免疫機能を広く抑制せずに過剰な炎症を制御できる標的として注目されています。近年では、高分解能の結晶構造解析やCryo-EMデータの蓄積も進み、高選択性・高親和性を備えた次世代経口低分子薬の設計に向けた構造情報も充実しつつあります。

単一疾患から幅広い適応へ:高まるアンメットメディカルニーズ

C5AR1は好中球性炎症の「中核スイッチ」として機能するため、その創薬ポテンシャルはANCA関連血管炎(AAV)にとどまらず、さまざまな疾患領域へ広がりつつあります。特に以下の領域では、C5a-C5AR1経路の関与と治療標的としての可能性が報告されています。

  • 皮膚疾患:化膿性汗腺炎(HS)や慢性特発性蕁麻疹(CSU)では、好中球浸潤が重要な病理学的特徴とされています[6-7]。
  • 腎疾患:ループス腎炎、C3糸球体症など[8-9]。
  • 神経炎症:中枢神経系ループスや一部の神経変性疾患におけるグリア細胞活性化[10]。
  • 腫瘍微小環境:C5AR1は免疫抑制性細胞のリクルートに関与します。その阻害により、腫瘍関連マクロファージの表現型を再プログラムし、既存の免疫療法の効果を高めることが期待されています[11]。

こうした研究開発動向から、C5AR1はすでに検証が進んだ有望な標的であり、臨床応用の拡大に向けて注目すべき時期を迎えていることがうかがえます。

huC5AR1ヒト化マウスモデル

こうした課題に対応し、C5AR1創薬を進める研究開発パートナーを支援するため、CyagenはhuC5AR1ヒト化マウスモデル(製品番号:C001714)を提供しています。本モデルは、関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患、アルツハイマー病(AD)関連神経炎症、一部の腫瘍発生機序の研究などに活用できます。以下に代表的な検証データを示します。詳細は製品資料をご参照ください。

  • huC5AR1マウスの骨髄(Bone Marrow)および脾臓(Spleen)の骨髄系細胞において、ヒトC5AR1タンパク質の発現が確認されました。
huC5AR1マウス骨髄におけるC5AR1タンパク質発現のFACS解析結果

図4. FACSによるマウス骨髄におけるC5AR1タンパク質発現の解析(6週齢、ホモ接合体、雌雄、n=5)。

huC5AR1マウス脾臓におけるC5AR1タンパク質発現のFACS解析結果

図5. FACSによるマウス脾臓におけるC5AR1タンパク質発現の解析(6週齢、ホモ接合体、雌雄、n=5)。

  • huC5AR1マウスと野生型(WT)対照マウスでは、白血球、赤血球、血小板に関連する血液学的パラメータが概ね同等でした。各項目はいずれも正常な生理範囲内にあり、遺伝子型に起因する有意差は認められませんでした。
huC5AR1マウスとWT対照マウスの血算検査結果

図6. マウス血算検査結果(6週齢、雌)。

結語:C5AR1創薬を加速するために

BiogenやInflaRxなどの企業がC5AR1領域での開発を加速するなか、CyagenのhuC5AR1ヒト化マウスモデル(製品番号:C001714)は、ヒトとマウスの種差という課題に対応し、差別化されたC5AR1標的薬の開発を支援する有用な前臨床研究ツールです。好中球性炎症の制御に向けた新たなアプローチは、すでに現実的な選択肢になりつつあります。Cyagenは、より安全で有効な次世代C5AR1療法の臨床応用を目指す研究開発を、皆さまとともに推進してまいります。

参考文献

[1] Biogen. (2025, October 24). Biogen Licenses Oral C5aR1 Antagonist from Vanqua Bio to Expand Immunology Portfolio [Web]. GlobeNewswire.

[2] U.S. Food and Drug Administration. (2026, March 31). FDA identifies cases of serious liver injury in patients taking Tavneos (avacopan) for severe active anti-neutrophil cytoplasmic autoantibody (ANCA)-associated vasculitis. U.S. Food and Drug Administration.

[3] InflaRx. (2026, May 11). InflaRx Reports Favorable Reactive Metabolite Profile for Izicopan in Human Liver Microsomes. InflaRx.

[4] Xu B, Zhou Z, Xiao Y, Liu Q, Xiao T, Lv Z, Wang H. The Pleiotropic Effect of Complement C5a-C5aR1 Pathway in Diseases: From Immune Regulation to Targeted Therapy. Int J Mol Sci. 2025 Dec 3;26(23):11693.

[5] Trambas IA, Coughlan MT, Tan SM. Therapeutic Potential of Targeting Complement C5a Receptors in Diabetic Kidney Disease. Int J Mol Sci. 2023 May 15;24(10):8758.

[6] van Straalen KR, Dudink K, Aarts P, van der Zee HH, van den Bosch TPP, Giang J, Prens EP, Damman J. Complement activation in Hidradenitis suppurativa: Covert low-grade inflammation or innocent bystander? Front Immunol. 2022 Sep 21;13:953674.

[7] Yan S, Chen W, Wen S, Zhu W, Guo A, Chen X, Zhang C, Chen M, Zhang J, Su J, Zhao Y, He Y, Liu Z, Zhou H, Zeng W, Li J, Chen X. Influence of component 5a receptor 1 (C5AR1) -1330T/G polymorphism on nonsedating H1-antihistamines therapy in Chinese patients with chronic spontaneous urticaria. J Dermatol Sci. 2014 Dec;76(3):240-5.

[8] Ye B, Chen B, Guo C, Xiong N, Huang Y, Li M, Lai Y, Li J, Zhou M, Wang S, Wang S, Yang N, Zhang H. C5a-C5aR1 axis controls mitochondrial fission to promote podocyte injury in lupus nephritis. Mol Ther. 2024 May 1;32(5):1540-1560.

[9] Gong XJ, Huang J, Shu Y, Wang M, Ji J, Yang L, Zhao MH, Cui Z. Complement C5a and C5a receptor 1 mediates glomerular damage in focal segmental glomerulosclerosis. Clin Immunol. 2025 Apr;273:110459.

[10] Schartz ND, Liang HY, Carvalho K, Chu SH, Mendoza-Arvilla A, Petrisko TJ, Gomez-Arboledas A, Tenner AJ. C5aR1 antagonism suppresses inflammatory glial responses and alters cellular signaling in an Alzheimer’s disease mouse model. Nat Commun. 2024 Aug 15;15(1):7028.

[11] Beach C, MacLean D, Majorova D, Melemenidis S, Nambiar DK, Kim RK, Valbuena GN, Guglietta S, Krieg C, Darvish-Damavandi M, Suwa T, Easton A, Hillson LV, McCulloch AK, McMahon RK, Pennel K, Edwards J, O’Cathail SM, Roxburgh CS, Domingo E, Moon EJ, Jiang D, Jiang Y, Zhang Q, Koong AC, Woodruff TM, Graves EE, Maughan T, Buczacki SJ, Stucki M, Le QT, Leedham SJ, Giaccia AJ, Olcina MM. Improving radiotherapy in immunosuppressive microenvironments by targeting complement receptor C5aR1. J Clin Invest. 2023 Dec 1;133(23):e168277.

ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas

MouseAtlas(マウスアトラス)は、KOマウスからヒト化マウスまで、遺伝子や製品モデル名で検索できるプラットフォームです。生体マウスか精子凍結状態か、リアルタイムの在庫状況、検証データ、詳細な説明を直感的に確認でき、直接注文も可能です。社内の製品管理システムと連携して常に最新情報が更新されており、現在39,000種類以上のモデルマウスを収録しています。研究者の皆様にとって非常に便利なワンストップソリューションです。

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Cyagenについて

Cyagen Biosciences Inc.(「サイヤジェン(Cyagen)」)は2006年、医薬品開発業務受託機関及び細胞関連製品メーカーとして創業しました。現在、世界に1000名以上の社員が勤務しています。本社をアメリカ・カリフォルニア州シリコンバレーに置き、中国の蘇州と広州を製造拠点にしています。2016年に日本支店(サイヤジェン株式会社)を開設しました。遺伝子改変アニマルモデル作製のリーディングカンパニーとして、リーズナブルな価格帯で、高品質の試薬・ツールを提供しています。Cyagenはマウスモデルの提供だけでなく、眼科、神経科学、腫瘍免疫など様々な分野で契約研究機関(CRO)サービスも提供しています。私たちは遺伝性疾患の研究を支援し、遺伝子治療薬の開発を促進することを目指しています。

FAQ

C5AR1はなぜ創薬標的として注目されているのですか?

C5AR1はC5aに応答して好中球の遊走、脱顆粒、ROS産生、NETs形成などを誘導する上流受容体であり、炎症反応の増幅に深く関与します。そのため、免疫機能全体を広く抑制せずに過剰な炎症を制御できる可能性がある標的として注目されています。

C5AR1阻害薬の開発で重要な差別化ポイントは何ですか?

近年は有効性に加え、安全性、とくに肝毒性リスクの低減が重要な差別化ポイントとして認識されています。また、経口投与のしやすさ、長期投与への適性、選択性、PK/PD評価の再現性も開発上の重要な要素です。

野生型マウスではC5AR1標的薬の評価に限界があるのはなぜですか?

ヒトC5AR1とマウスC5AR1の間には配列や立体構造の差があるため、ヒト特異的抗体や低分子化合物であっても、野生型マウスでは親和性、PK/PD、in vivo薬効、安全性を十分に反映できない場合があります。

huC5AR1ヒト化マウスモデルはどのような研究に適していますか?

本モデルは、関節リウマチや炎症性腸疾患などの炎症性疾患研究、アルツハイマー病関連の神経炎症研究、一部の腫瘍発生機序の研究、さらにC5AR1標的薬の前臨床評価に活用できます。

huC5AR1ヒト化マウスモデルではどのような検証が行われていますか?

提示されたデータでは、骨髄および脾臓の骨髄系細胞におけるヒトC5AR1タンパク質発現がFACSで確認されています。また、WT対照と比較して血液学的パラメータは概ね同等で、遺伝子型に起因する有意差は認められていません。

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カタログ番号名称ベース系統研究応用操作
C001714huC5AR1C57BL/6NCyaC5AR1-targeted drug screening, development, and evaluation; Research on the pathological mechanisms and therapeutic approaches of various inflammatory diseases and autoimmune diseases, such as psoriasis, rheumatoid arthritis, and inflammatory bowel disease; Research on the neuroinflammation related to Alzheimer's disease and some tumors.
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