HFD+CCl4誘導型代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH/NASH)モデルマウス


代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis: MASH)は、従来、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)と呼ばれていた慢性肝疾患です。本疾患は、肥満や糖尿病などの代謝異常に起因して生じることが多く、肝臓への脂肪蓄積を引き起こします。蓄積した脂肪は毒性を示し、炎症を惹起することがあります。この炎症は線維化を伴い、さらに肝硬変や肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)へ進展する可能性があります。MASHは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に相当する代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease: MASLD)の疾患スペクトラムの中で、最も重篤な病態です。 [1]
本試験の目的は、前臨床研究ニーズに対応可能な線維化特性を有するMASH(NASH)モデルを構築することです。また、初のFDA承認MASH治療薬であるRezdiffra(resmetirom)を用いて、本MASHモデルにおける治療有効性を評価しました。
複合MASHマウスモデルの試験方法
C57BL/6Jマウス40匹(4~5週齢、雄)を受領し、標準的な12時間明暗サイクル(消灯:午後7時)下で飼育しました。35匹には高脂肪食(HFD;D12492、総カロリーの60%を脂肪由来)を12週間給餌し、残り5匹には通常飼料を給餌しました。四塩化炭素(CCl4)は肝障害を惹起し、単独投与または高脂肪食との併用により脂肪肝あるいは肝線維化を誘導可能であり、比較的短期間で病態誘導が可能な方法です。介入開始時にマウスを無作為化し、4群に分けました:第1群、通常飼料対照群(n=5);第2群、HFD対照群(n=5);第3群、HFD+四塩化炭素(CCL4)群(n=5);第4群、HFD+CCL4+resmetirom 3 mg/kg毎日経口投与群(n=5)。処置は高脂肪食(HFD)を12週間負荷した後の第13週から開始し、4週間継続しました。処置期間中、体重は1日1回測定しました。処置終了後、全マウスを安楽死させ、血液および肝臓を採取し、追加検証に供しました。
HFD+CCl4誘導MASH(NASH)マウスにおける有効性データ
図2. Resmetiromの体重および肝重量に対する影響
(A)介入期間中の体重推移、(B)試験終了時点における肝重量。
*P <0.05はHFD対照群と比較して有意差ありを示す。データはMean±SEMで表示し、各群n = 5とした。
*p < 0.05を統計学的有意差ありとし、一元配置分散分析(one-way ANOVA)により解析した。
図3. Resmetiromは血清TC、HDL-CおよびLDL-C値を改善した。
(A)総コレステロール(TC)値、(B)高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値、(C)低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値
データはMean±SEMで表示し、各群n=5とした。# p < 0.05、## p < 0.005、####p < 0.001はWT群との比較、* p < 0.05、** p < 0.005はHFD+CCL4群との比較を示し、一元配置分散分析(one-way ANOVA)により解析した。
図4. ResmetiromはDay 14および試験終了時点において、それぞれCCL4により誘導された血清ALTおよびAST値を抑制した。
(A)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値、(B)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値
データはMean±SEMで表示し、各群n=5とした。# p < 0.05、## p < 0.005はWT群との比較、* p < 0.05、** p < 0.005はHFD+CCL4群との比較を示し、一元配置分散分析(one-way ANOVA)により解析した。
図5. 通常飼料(WT)、高脂肪食(HFD)、HFD+CCl4(0.125 mL/kg)、ならびにHFD+CCl4(0.125 mL/kg)+resmetirom(3 mg/kg)を4週間投与したマウスにおける病理組織学的評価
Resmetiromは、HFDにより誘導された肝脂肪化および肝細胞バルーニングを抑制した。(A)H&E染色代表画像、(B)ORO染色代表画像、(C)PSR染色代表画像、(D)NASスコア。 図Aにおいて、青矢印は脂肪化、緑矢印は小葉性炎症、黒矢印は肝細胞バルーニングを示す。病理スコアは、脂肪化(0–3)、小葉性炎症(0–3)、バルーニング(0–2)、NAS Activity(0–8)として評価した。データはMean±SEMで表示し、各群n=5とした。
図6. Resmetiromは肝線維化マーカーのmRNA発現レベルを抑制した。
結論
高脂肪食(HFD)は、DIOマウスにおいて12週間の給餌後に体重、肝重量、血清TC、HDL-C、LDL-C、ASTおよびALT値を上昇させます。CCL4はDIOマウスにおける誘導期間を短縮するとともに肝線維化を増悪させ、マウスにおけるMASH進展を加速・増強します。CCL4投与マウスでは、肥満、脂肪化および線維化が認められ、MASHの臨床的基準を満たす病態が形成されます。本モデルは、MASHに対する新規候補治療薬の評価において、製薬業界で広く利用されています。Resmetirom投与により、体重および肝重量が有意に低下し、血清TC、HDL-CおよびLDL-C値も低下しました。さらに、resmetiromはDIO+CCL4複合MASHマウスモデルにおいて、脂肪化および線維化を軽減する有効性を示しました。
以上のモデルは、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH/NASH)の研究における重要なツールを提供し、その病態形成機序のより深い理解を促進するとともに、新規治療法開発の可能性を支えます。さらに、サイヤジェン(Cyagen)バイオサイエンスでは、代謝性疾患および心血管疾患研究向けに多様な遺伝子改変モデルおよび誘導モデルを提供しており、当該分野の研究者の実験ニーズに対応しています。
代謝性疾患および心血管疾患研究のための遺伝子改変モデル
サイヤジェン(Cyagen)のマウスモデル創薬スクリーニング・評価プラットフォームでは、Ldlrノックアウト(KO)(em)、Lep KO、Uox-KO(Prolonged)、Atp7b KO、Foxj1 KOなど、多様な遺伝子改変モデルを提供しています。また、肥満、動脈硬化、2型糖尿病、膵炎などの研究に対応する各種代謝性疾患モデルに加え、表現型解析からin vivo薬効評価までを含む包括的な前臨床CROサービスも提供可能です。これらの総合的な技術基盤により、次世代前臨床疾患研究および新薬開発の効率化を支援します。
代謝性疾患および心血管疾患研究のためのその他のマウスモデル:自然発症、誘導、複合、および外科手術モデル
| 食餌誘導性肥満(DIO)モデル | 2型糖尿病(T2DM)モデル | 1型糖尿病(T1DM)モデル | 食餌誘導性代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)モデル |
| 化学物質誘導性MASLDモデル | MASLDモデル | 複合MASLDモデル | 複合動脈硬化モデル |
| 動脈硬化モデル | 急性膵炎モデル | 慢性膵炎モデル | DIO&CCL4誘導MASH(NASH)マウスモデル |
参考文献
- Shuang Wang and Scott L. Found in Translation – Fibrosis in Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis (MASH). Sci Transl Med. 2023 Oct 4; 15(716).
サイヤジェン(Cyagen)について
サイヤジェン(Cyagen)は、創業から20年足らずで、カスタムマウス・ラットモデルの主要プロバイダーへと成長しました。これまでに世界中の研究者へ50,000件を超えるモデルを提供し、16,000報を超える査読付き論文で引用されています。当社のAAALAC認証施設では最大250,000匹のSPF動物を収容可能であり、高品質基準およびコンプライアンスを確保しています。
サイヤジェン(Cyagen)は、研究戦略の設計から研究に供試可能なカスタムモデルの納品まで、細胞・動物モデルに関する包括的なアウトソーシングサービスを提供しています。世界7,000を超えるバイオサイエンス関連機関との連携を通じて、動物遺伝子改変およびカスタムモデル作製に関する専門知見を提供しています。遺伝子型検証保証付きのあらゆるカスタムマウス・ラットモデルの作製に加え、表現型解析、薬効評価、その他の下流サービスまで、研究ニーズに応じた支援を提供します。
詳細については、お気軽にお問い合わせください。




