【Weekly Research Model】重症複合免疫不全マウスの選択肢につき


目次
01 SCIDマウスの遺伝子的背景と免疫不全のメカニズム 02 免疫漏出とその影響 03 SCIDマウスの照射感受性 04 異種移植研究における利点 05 代表的なSCIDマウス株の特徴 06 研究応用と新薬開発サポートSCIDマウスの遺伝子的背景と免疫不全のメカニズム
SCIDマウス、すなわち重症複合免疫不全(severe combined immune-deficiency, SCID)マウスは、1980年にBosma博士のチームによって初めてC.B-17/Icrマウス(後にC.B-17 SCIDマウスと命名)の中で発見された。SCIDマウスは16番染色体における劣性遺伝子突然変異(PrkdcSCID)を持つ。Prkdc遺伝子はDNA依存性タンパクキナーゼの触媒サブユニット(DNA-PKcs)をコードする。このタンパク質はT細胞およびB細胞のT細胞抗原受容体(TCR)およびB細胞抗原受容体(BCR)遺伝子におけるV(D)J再編成に深く関与している。そのため、SCIDマウスは機能的なTおよびBリンパ球を有しておらず、ほとんどのホモ接合体は検出可能なレベルのIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgAを欠いている。さらに、胸腺、リンパ節、脾臓の濾胞領域にはほとんどリンパ細胞が存在しない。
図1. V(D)Jの再配列[1]
免疫漏出とその影響
しかし、年齢とともに一部のSCIDマウスでは免疫漏出(Leakiness)が生じ、少量の機能的TおよびB細胞、並びに免疫グロブリン(Ig)が体内に生成されることがある。この現象はnon-SPF条件下で飼育されるSCIDマウスにおいて発生率が高くなる。現在のところ、SCIDマウスにおける免疫漏出の分子メカニズムは未解明であり、明確な判定基準も存在しない(Jax社は血清Ig含量が1 µg/mlを超えるSCIDマウスを「leaky」と定義している)。また、この現象の発生率は遺伝的バックグラウンドによって異なり、一般的にC57BL/6JおよびBALB/cバックグラウンドでは漏出率が高く、C3Hバックグラウンドでは低く、NODバックグラウンドでは極めて低い。
SCIDマウスの照射感受性
SCIDマウスは照射に対して非常に感受性が高い。照射によりDNAの二本鎖切断が生じるが、その修復にはDNA-PKが関与している。PrkdcSCID突然変異を持つ細胞は損傷したDNAを適切に修復できないため、細胞傷害および細胞死を引き起こす。
図2. DNA PKcsがDNAの二重鎖切断の修復に関与[2]
異種移植研究における利点
ヌードマウスがT細胞不全に留まるのに対し、SCIDマウスはより高度な免疫不全を示すため、腫瘍移植に必要な細胞数や発生速度において優位性がある。これにより、ヒト腫瘍細胞株由来の異種移植(cell-derived xenograft, CDX)や患者由来腫瘍組織の異種移植(patient-derived tumor xenograft, PDX)をより効果的に移植可能である。また、PrkdcSCID突然変異を異なる遺伝的バックグラウンドのマウスに導入することで、それぞれに特徴的なSCIDマウス株を得ることができる。
グラフ1. 異なるSCIDマウスの特徴比較[3-4] 「-」:欠失「+」:正常
代表的なSCIDマウス株の特徴
C.B-17 SCIDマウス
C.B-17 SCIDマウスはBALB/cマウスの同源近交系であり、PrkdcSCID突然変異遺伝子とC57BL/Kaマウス由来のIgh-1b対立遺伝子を除けば、遺伝的に類似している。このマウスは機能的TおよびBリンパ球を欠くが、正常なNK細胞、骨髄系細胞、および補体免疫機能を保有する。免疫漏出率は高い。
C3H SCIDマウス
C3H SCIDマウスはC3Hマウスをベースに持つSCIDマウスであり、免疫漏出率が低く、照射感受性は高い。TおよびBリンパ球を欠く一方で、NK細胞機能は保たれている。
SCID Beigeマウス
SCID BeigeマウスはC.B-17 SCIDマウスとbeigeマウスの交配により得られたもので、SCID変異によりTおよびB細胞を欠き、beige変異(Lystbg)によりNK細胞機能が不全となる。これにより、内因性細胞障害活性が低下し、細胞傷害性T細胞およびマクロファージの機能も不全となる。また、血小板貯蔵プールが不足するため、止血時間が延長する。
NOD SCIDマウス
NOD SCIDマウスはNOD(Non-obese diabetic)マウスにPrkdcSCID遺伝子を導入して作出された。TおよびB細胞を欠くことに加え、NOD由来の多種免疫不全を有する。具体的には、補体5(C5)の欠損、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞の機能低下などが挙げられる。自発性糖尿病は発症しないが、胸腺リンパ腫の発生リスクがあり、寿命は約8~9ヶ月と短い。
研究応用と新薬開発サポート
機能的TおよびBリンパ球を欠くSCIDマウスは、腫瘍免疫研究において重要な役割を果たしている。異なる遺伝的バックグラウンドのSCIDマウスはそれぞれに特徴があり、研究者に多様な選択肢を提供している。現在、SCIDマウスの中で最も高い免疫不全レベルを持つのはNOD SCIDマウスである。研究者はニーズに応じてさらに遺伝子改変を加えることができる。たとえば、IL2Rgをノックアウトすることで、機能的NK細胞を欠損させ、免疫不全レベルをさらに高め、異種細胞・組織の移植効率を向上させる(例:NKG、NSG、NOGマウスなど)。また、SCIDマウスの免疫漏出や照射感受性の課題から、V(D)J再編成においてDNA-PKよりも上流で機能するRag1およびRag2タンパク質に注目が集まっている。Rag1およびRag2は再結合信号配列(RSS)の認識と切断を担当し、これらが欠損するとV(D)J再組換えは起こらない。このため、Rag1およびRag2ノックアウトマウスは免疫漏出を示さず、DNA二本鎖修復経路には関与しないため、照射に対しても感受性を示さない(例:Rag1 KO、BGSFマウスなど)。
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サイヤジェンのSCIDマウスと免疫不全マウスの研究サポート
免疫不全マウスは腫瘍研究をサポートするNOD scidを含む多種のモデルを提供しています。
表現型情報:
- 独自の複数免疫不全はヒト造血幹細胞の復旧に極めて優れたシステムを提供し、HIV-1研究と遺伝子治療の重要なモデルとなる。
- 腫瘍研究の重要なツールであり、特にリンパ腫と胸腺腫等、腫瘍の発生率を向上する可能である。
- 致死的な胸腺リンパ腫を移植する場合には寿命が短いである。
研究応用:
- 同種移植と異種移植、腫瘍細胞の増殖、侵襲と転移の潜在力、および抗癌治療法の効果の評価に使用可能である。
- 腫瘍免疫学および炎症の研究に有用。
- 糖尿病と肥満に関する研究(I型糖尿病)。
- 血液学研究(例:白血病)。
サイヤジェンの薬物選別評価マウスプラットフォームはNOD scidに加え、BALB/c nude(ヌードマウス)、C-NKG、およびヒト免疫系再構築マウスなども提供しており、研究者の皆様の新薬開発をサポートいたします。




