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動物科学と品質管理

コンディショナルノックアウトマウスをどう同定するか?

Cyagen Technical Content Team | July 28, 2020
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目次
01 ノックアウトマウスとは 02 ノックアウトマウスの作製フロー 03 TurboKnockout™遺伝子ターゲティングマウス作製サービス 04 CRISPR/Cas9によるノックアウトマウス作製法

ノックアウトマウスとは、特定の遺伝子を置換、欠失、または機能破壊することにより、標的遺伝子の発現または機能を失わせた遺伝子改変マウスです。遺伝子機能解析、疾患発症メカニズムの解明、創薬研究、薬効評価および安全性評価など、基礎研究から前臨床研究まで幅広い領域で利用されています。

標的遺伝子を不活化することで、当該遺伝子が個体発生、生理機能、代謝、免疫応答、神経機能、腫瘍形成などに及ぼす影響を個体レベルで検証できます。そのため、ノックアウトマウスは遺伝子の機能同定やヒト疾患モデルの構築において不可欠な研究ツールの一つです。

ノックアウトマウス作製の一般的な流れや代表的な技術については、「ノックアウトマウス作製方法」をご覧ください。また、各種遺伝子ノックアウトマウスについては、「遺伝子ノックアウトマウス」もあわせてご参照ください。

ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas

MouseAtlas(マウスアトラス)は、KOマウスからヒト化マウスまで、遺伝子名や製品モデル名で目的のモデルを検索できるプラットフォームです。生体マウスまたは凍結精子での提供可否、リアルタイムの在庫状況、検証データ、モデルの詳細情報を直感的に確認でき、そのままお問い合わせ・ご注文まで進めることができます。社内の製品管理システムと連携して常に最新情報を反映しており、現在39,000種類以上のマウスモデルを収録しています。研究計画の立案からモデル選定までを効率化する、研究者の皆様に有用なワンストップソリューションです。

遺伝子シンボル、疾患領域、表現型、既存モデルの有無などを起点に検索できるため、新規モデルの作製が必要か、既製モデルを利用できるかを早期に判断できます。これにより、研究期間の短縮、コスト削減、実験計画の最適化に貢献します。

>> MouseAtlasで目的の遺伝子を検索する

ノックアウトマウスの作製フロー

1.ターゲティングベクターを作製する

まず、ノックアウトの対象となる遺伝子および標的領域を決定し、ターゲティングベクターを設計・構築します。従来のES細胞を用いた遺伝子ターゲティングでは、標的遺伝子座と相同な配列を持つホモロジーアームをベクターに組み込み、必要に応じて薬剤選択マーカーやレポーター配列を配置します。ゲノムDNAから目的領域をクローニングする方法、またはPCR法により目的配列を増幅してベクターへ組み込む方法が用いられます。

2.相同組換えES細胞を取得する

構築したターゲティングベクターをES細胞(胚性幹細胞)に導入し、標的遺伝子座で相同組換えが生じた細胞を薬剤選択および分子生物学的解析によりスクリーニングします。得られた陽性クローンは単離・増殖させ、PCR、サザンブロット解析、シークエンシング、核型解析などにより正確な遺伝子改変と染色体の安定性を確認します。ES細胞は多分化能を有するため、胚へ導入することで個体内のさまざまな組織に寄与することができます。ES細胞を用いたターゲティング技術や相同組換えによる遺伝子改変について詳しくは、「ES細胞ターゲティング」をご覧ください。

3.キメラマウスを作製する

確認済みのES細胞クローンを胚盤胞へマイクロインジェクションし、その胚盤胞を偽妊娠マウスの子宮へ移植します。着床・発生を経て、ES細胞由来細胞と宿主胚由来細胞の両方を持つキメラマウスが得られます。得られたキメラ個体では、ES細胞が生殖系列へ寄与しているかどうかを評価することが重要です。

4.キメラマウスと野生型マウスを交配する

標的変異を次世代へ伝達させるため、キメラマウスを野生型マウスと交配し、ヘテロ接合性ノックアウトマウスを取得します。その後、ヘテロ接合体同士を交配することで、ホモ接合性ノックアウトマウスを得ることができます。なお、標的遺伝子が胚発生や生存に必須である場合、ホモ接合体が致死となる可能性があるため、コンディショナルノックアウト戦略や組織特異的Creドライバーマウスとの組み合わせが検討されます。ホモ接合体で胚性致死が予想される場合には、コンディショナルノックアウト(cKO)の利用も検討されます。詳しくは、「KOとCKOの選択方法」をご覧ください。

サイヤジェン(Cyagen)のノックアウトマウスモデル作製サービスでは、独自技術であるTurboKnockout™を用いてノックアウトマウスを作製しています。研究目的、標的遺伝子の構造、必要な改変形式、納期、系統背景などに応じて、最適な作製戦略をご提案します。

TurboKnockout™遺伝子ターゲティングマウス作製サービス

TurboKnockout™は、サイヤジェン(Cyagen)独自のES細胞構築技術と遺伝子改変技術を組み合わせた、効率的な遺伝子ターゲティングマウス作製プラットフォームです。生殖系列伝達能に優れたTurboKnockout™ ES細胞を用いることで、従来法で必要とされるキメラマウスの作製・評価工程を簡略化し、標的遺伝子改変を有するマウスをより効率的に取得できます。特に、大きな領域の置換、正確な挿入、複雑なコンディショナルアレル作製など、精密なゲノム改変が求められる研究に適しています。

本技術では、設計段階からベクター構築、ES細胞ターゲティング、陽性クローンの検証、マウス作製、ファウンダー確認までを一貫して実施します。PCRやサザンブロット解析など複数の検証方法を組み合わせることで、標的遺伝子座における正確な組換えイベントを確認し、信頼性の高いモデル構築を支援します。

TurboKnockout™遺伝子ターゲティング技術によるノックアウトマウス作製フロー:

1. 遺伝子ターゲティング戦略を設計する

標的遺伝子の情報を詳細に解析します。解析対象には、遺伝子構造、エキソン構成、転写産物、機能ドメイン、遺伝子座周辺の遺伝子、既存の動物モデル情報、関連文献情報などが含まれます。

ターゲットES細胞のPCRスクリーニングおよびサザンブロット解析による確認方法を含め、遺伝子ターゲティング戦略を設計します。ノックアウトの目的に応じて、重要エキソンの欠失、開始コドン周辺の破壊、フレームシフト誘導、選択マーカーの配置などを検討します。

設計内容、予想される改変アレル、スクリーニング方法、納品形態を明記した計画案を作成し、お客様にご確認・ご承認いただいたうえでプロジェクトを開始します。

2. TurboKnockout™ターゲティングベクターを構築する

ターゲティングベクターには、標的遺伝子座と相同なホモロジーアーム配列をクローニングし、必要に応じて薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子、loxP配列、FRT配列などを組み込みます。

構築後のターゲティングベクターは、制限酵素解析およびシークエンシングにより配列と構造の正確性を確認します。これにより、ES細胞導入前の段階で設計通りのベクターが得られていることを検証します。

3. ES細胞ターゲティング

エレクトロポレーションにより、ターゲティングベクターをTurboKnockout™スーパーES細胞へ導入し、薬剤耐性マーカーを利用して候補クローンを選択します。一般的に、サイヤジェン(Cyagen)のES細胞はC57BL/6系統に由来します。また、研究目的に応じてBALB/c由来ES細胞を用いたサービスにも対応可能です。

得られたES細胞クローンに対してPCRスクリーニングを行い、標的遺伝子座で組換えが生じた候補クローンを選別します。

PCR陽性クローンについては、必要に応じてサザンブロット解析やシークエンシングを実施し、ランダム挿入ではなく標的遺伝子座で正確な相同組換えが起きていることを確認します。

さらに、正常な染色体数と核型の維持を確認するため、ES細胞の核型解析を実施します。核型が安定したクローンを用いることで、その後のマウス作製成功率と生殖系列伝達の信頼性を高めます。

4. TurboKnockout™マウスを作製する

検証済みのES細胞を用いて胚操作を行い、偽妊娠マウスへ移植します。得られるF0個体は、TurboKnockout™ ES細胞に由来する標的改変アレルを有するヘテロ接合性マウスとなります。

得られたファウンダーマウスに対してPCRジェノタイピングを行い、標的変異の有無を確認します。必要に応じてシークエンシング解析を追加し、目的の改変が正確に導入されていることを確認したうえで、繁殖・系統確立へ進みます。

CRISPR/Cas9によるノックアウトマウス作製法

CRISPR/Cas9は、現在最も広く利用されているゲノム編集技術の一つであり、ノックアウトマウスの作製にも広く応用されています。ガイドRNA(gRNA)が標的DNA配列へCas9ヌクレアーゼを誘導し、標的部位にDNA二本鎖切断(Double-Strand Break:DSB)を導入します。その後、細胞のDNA修復機構である非相同末端結合(NHEJ)が働くことで挿入・欠失変異(indel)が生じ、フレームシフト変異や早期終止コドンの形成によって標的遺伝子の機能が失われます。

単一のgRNAを用いてコード領域へフレームシフト変異を導入する方法が一般的ですが、機能的に重要なエキソンを欠失させる場合には、その両側に2種類のgRNAを設計し、目的領域を切除する戦略も広く用いられています。

CRISPR/Cas9法は、従来のES細胞を用いた相同組換え法と比較して作製期間が短く、設計の自由度が高いことから、遺伝子機能解析、疾患モデル作製、薬効評価など幅広い研究分野で利用されています。一方で、オフターゲット変異、モザイク個体の発生、編集効率のばらつきなどを考慮する必要があり、gRNA設計やファウンダー解析、F1世代での変異確認が重要となります。

CRISPR/Cas9によるノックアウトマウス作製の一般的な流れ

1. ゲノム編集戦略の設計

標的遺伝子の構造および目的とする変異形式に応じて、gRNAの標的配列を選定します。編集効率やオフターゲット候補を考慮しながらgRNAを設計し、必要に応じてPCRやDNAシークエンシングによるジェノタイピング方法もあわせて計画します。

2. Cas9およびgRNAの調製

Cas9はタンパク質、mRNA、または発現ベクターなどの形態で利用されます。gRNAについても、実験系に応じて適切な方法で調製され、必要に応じて培養細胞で編集効率を評価することがあります。

3. 受精卵への導入

調製したCas9およびgRNAは、マイクロインジェクションまたはエレクトロポレーションによって受精卵へ導入されます。編集後の受精卵は仮親マウスへ移植され、ファウンダーマウスが作製されます。

4. ファウンダーマウスの解析

出生したファウンダーマウスについて、PCRおよびDNAシークエンシングにより標的部位を解析し、挿入・欠失変異や目的エキソンの欠失が確認されます。目的の変異を有する個体は、ノックアウトファウンダー候補として選抜されます。

5. 系統樹立

ファウンダーマウスにはモザイク変異が含まれる場合があるため、一般的には野生型マウスとの交配を行い、F1世代において目的変異が生殖系列へ伝達されていることを確認します。その後、目的変異を有する個体を選抜し、ノックアウトマウス系統を樹立します。

CRISPR/Cas9は、ノックアウトマウス作製に利用される代表的なゲノム編集技術の一つです。研究目的や求められる遺伝子改変の内容に応じては、ES細胞を用いた相同組換え法など、他の作製技術が選択される場合もあります。

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