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自己免疫疾患・炎症

C5AR1創薬の臨床突破口:好中球性炎症とヒト化マウスモデル

Cyagen Technical Content Team | June 12, 2026
先進的なC5AR1ヒト化マウスモデルをご紹介
CyagenのhuC5AR1ヒト化マウスを活用し、種差の壁を克服してC5AR1拮抗薬の開発を加速します。
先進的なC5AR1ヒト化マウスモデルをご紹介
目次
01. C5AR1の作用機序:C5a受容体が好中球性炎症と組織損傷を駆動する仕組み 02. AAV(ANCA関連血管炎)を超えるC5AR1応用:HS、ループス腎炎、神経炎症、腫瘍領域の未充足ニーズ 03. Cyagen huC5AR1ヒト化マウスモデル:種差を克服するC5AR1前臨床評価 04. FAQ 05. 参考文献

補体C5a受容体1(C5AR1、C5aR1またはCD88)は、補体系における重要なGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、好中球駆動性炎症の中核的な制御ノードとして長く注目されてきました。2025年末、BiogenはVanqua Bioの前臨床段階にある経口・末梢指向性C5AR1アンタゴニストについて、最大10.6億米ドル規模の契約でグローバル独占権を取得しました[1]。この動きは業界で大きな注目を集め、C5AR1標的、特に好中球介在性疾患における大手製薬企業の継続的な期待を示しています。

BiogenがVanqua Bioから経口C5AR1アンタゴニストのグローバル権利を取得し免疫疾患パイプラインを強化
図1. BiogenはVanqua Bioから経口C5AR1アンタゴニストのグローバル権利を取得し、免疫疾患パイプラインを強化[1]。

2026年6月に入ると、一連の臨床データの公表により、C5AR1領域における差別化機会はさらに明確になっています。Avacopan(Tavneos®)は、初めて承認された経口C5AR1アンタゴニストとして、ANCA関連血管炎(AAV)におけるステロイド節約効果で大きなブレークスルーを示しました。一方で、今年3〜4月にFDAが肝障害に関する警告を発したことは、市場に冷水を浴びせる結果となりました[2]。この出来事により、後続開発企業は次世代C5AR1薬では安全性が中核的な競争力になることをより強く意識するようになっています。

同時に、InflaRxのIzicopan(INF904)は今年5月、CYP3A4の時間依存的阻害を示さないこと、反応性代謝物が少ないこと、肝毒性リスクが大幅に低いことを示す注目度の高い研究データを発表しました。これに先立つ第IIa相試験の良好な結果と合わせて、Izicopanは「肝毒性の落とし穴」を回避し得るベストインクラス候補として期待されています[3]。さらに、Biogenは抗C5AR1モノクローナル抗体Izastobartと経口小分子プログラムを並行して進めています。この「小分子+バイオ医薬品」の二本柱戦略も、好中球性炎症を制御する中核標的としてのC5AR1の戦略的価値を裏付けています。

2026年のC5AR1標的薬パイプライン概要:Biogen、InflaRx Izicopanおよび主要競合
図2. 2026年のC5AR1標的薬パイプライン概要:Biogen、InflaRx Izicopanおよび主要競合。

C5AR1の作用機序:C5a受容体が好中球性炎症と組織損傷を駆動する仕組み

C5AR1は典型的な7回膜貫通型GPCRであり、好中球、マクロファージ、単球などの骨髄系免疫細胞表面に高発現しています。そのリガンドであるC5aは、補体系の活性化に伴って産生される強力なアナフィラトキシンであり、「炎症増幅因子」とも呼ばれます。C5aがC5AR1に結合すると、Gi/oタンパク質シグナルを介して、好中球の走化性、脱顆粒、活性酸素種(ROS)バースト、好中球細胞外トラップ(NETs)形成を急速に誘導します。同時にNF-κBおよびMAPK経路を活性化し、IL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインの大量放出を引き起こし、血管障害や組織線維化を増幅します[4]。

C5a-C5AR1シグナル経路:好中球の走化性、脱顆粒、NETs形成、炎症性サイトカイン放出
図3. C5a-C5AR1シグナル経路:好中球の走化性、脱顆粒、NETs形成、炎症性サイトカイン放出[5]。

この上流の「スイッチ様」性質により、C5AR1は免疫系全体を広く抑制することなく、過剰炎症を精密に制御するための理想的な標的と位置付けられます。近年蓄積されている高分解能結晶構造やCryo-EMデータも、高選択性・高親和性を備えた次世代経口小分子薬設計の強固な構造基盤を提供しています。

AAV(ANCA関連血管炎)を超えるC5AR1応用:HS、ループス腎炎、神経炎症、腫瘍領域の未充足ニーズ

C5AR1は好中球駆動性炎症の「コアスイッチ」として機能するため、その創薬ポテンシャルはANCA関連血管炎(AAV)を大きく超え、複数の疾患モデルにまたがる新たな開発領域となっています。この経路は、以下の幅広い治療領域で大きな可能性を示しています。

  • 皮膚疾患:化膿性汗腺炎(HS)、慢性特発性蕁麻疹(CSU)。好中球浸潤が主要な病理学的特徴です[6-7]。
  • 腎疾患:ループス腎炎、C3糸球体症[8-9]。
  • 神経炎症:中枢神経系ループス、一部の神経変性疾患におけるグリア細胞活性化[10]。
  • 腫瘍微小環境:C5AR1は免疫抑制性細胞の動員を促進します。C5AR1を遮断することで腫瘍関連マクロファージの表現型を再構築し、既存免疫療法の有効性を高めることが期待されます[11]。

これらの実際の産業動向は、C5AR1がすでに十分に検証された成熟標的であり、2026年が臨床応用へ進むための重要なタイミングであることを示しています。

Cyagen huC5AR1ヒト化マウスモデル:種差を克服するC5AR1前臨床評価

炎症性疾患は世界的に大きな疾患負担をもたらしており、安全で有効、かつ利便性の高い治療への患者ニーズは高まっています。しかし、C5AR1創薬には大きな課題があります。

C5AR1標的では、ヒトC5AR1とマウスC5AR1のタンパク質配列および三次元構造に明確な差があります。そのため、in vitroでは優れた性能を示す高度にヒト化された抗体や小分子化合物でも、野生型マウスでは親和性、薬物動態/薬力学(PK/PD)、真のin vivo薬効、そして最も重要な安全性データを正確に評価することが困難な場合があります。これはIND申請および臨床トランスレーションにおける主要なボトルネックとなっています。肝毒性への懸念と激しい競争という二重の圧力のなか、差別化パイプラインをより速く、より安全に進めるにはどうすればよいのでしょうか。

ヒト化モデルは、不可欠な重要ステップになっています。

この課題を解決するため、CyagenはhuC5AR1ヒト化マウスモデル(製品番号:C001714)を提供しています。このモデルは、関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患、アルツハイマー病(AD)関連神経炎症、特定腫瘍の発症機序研究に利用できます。代表的な検証データを以下に示します。詳細データは製品資料をご参照ください。

製品名 製品番号 主な用途
huC5AR1ヒト化マウス C001714 C5AR1標的抗体・小分子薬の親和性、PK/PD、薬効、安全性評価
  • huC5AR1マウスの骨髄および脾臓組織の骨髄系細胞では、ヒトC5AR1タンパク質が生理学的に関連するレベルで発現します。
huC5AR1ヒト化マウス骨髄におけるヒトC5AR1タンパク質発現のFACS解析
図4. huC5AR1ヒト化マウス骨髄におけるヒトC5AR1タンパク質発現のFACS解析(6週齢、ホモ接合、雌雄、n=5)。
huC5AR1ヒト化マウス脾臓におけるヒトC5AR1タンパク質発現のFACS解析
図5. huC5AR1ヒト化マウス脾臓におけるヒトC5AR1タンパク質発現のFACS解析(6週齢、ホモ接合、雌雄、n=5)。
  • huC5AR1マウスでは、白血球、赤血球、血小板関連パラメータの全体的なレベルが野生型(WT)対照マウスと同等でした。すべての評価指標は正常な生理範囲内にあり、遺伝子型に関連する明確な差は認められませんでした。
huC5AR1ヒト化マウスと野生型対照の血算比較
図6. huC5AR1ヒト化マウスと野生型対照の血算比較(6週齢、雌)。
2026年にC5AR1パイプラインを進めるべき理由

BiogenやInflaRxなどの企業がC5AR1領域で戦略的展開を加速するこの重要なタイミングにおいて、CyagenのhuC5AR1ヒト化マウスモデル(製品番号:C001714)は、ヒト・マウス間の種差という課題を克服し、差別化されたC5AR1治療薬開発を推進する重要なイネーブリングツールとなります。好中球駆動性炎症の制御に向けた道はすでに開かれています。Cyagenのヒト化マウスモデルを確認し、次世代治療薬開発をどのように加速できるかをご覧ください。

ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas

MouseAtlas(マウスアトラス)は、KOマウスからヒト化マウスまで、遺伝子や製品モデル名で検索できるプラットフォームです。生体マウスか精子凍結状態か、リアルタイムの在庫状況、検証データ、詳細な説明を直感的に確認でき、直接注文も可能です。社内の製品管理システムと連携して常に最新情報が更新されており、現在39,000種類以上のモデルマウスを収録しています。研究者の皆様にとって非常に便利なワンストップソリューションです。

>> MouseAtlasで目的の遺伝子を検索する

サイヤジェン(Cyagen)について

Cyagen Biosciences Inc.(「サイヤジェン(Cyagen)」)は2006年、医薬品開発業務受託機関及び細胞関連製品メーカーとして創業しました。現在、世界に1000名以上の社員が勤務しています。本社をアメリカ・カリフォルニア州シリコンバレーに置き、中国の蘇州と広州を製造拠点にしています。2016年に日本支店(サイヤジェン株式会社)を開設しました。遺伝子改変アニマルモデル作製のリーディングカンパニーとして、リーズナブルな価格帯で、高品質の試薬・ツールを提供しています。Cyagenはマウスモデルの提供だけでなく、眼科、神経科学、腫瘍免疫など様々な分野で契約研究機関(CRO)サービスも提供しています。私たちは遺伝性疾患の研究を支援し、遺伝子治療薬の開発を促進することを目指しています。

FAQ

C5AR1はどのような創薬標的ですか?

C5AR1は補体系のC5a受容体で、好中球、マクロファージ、単球などの骨髄系免疫細胞に発現するGPCRです。C5aと結合すると、好中球の遊走、脱顆粒、ROS産生、NETs形成、炎症性サイトカイン放出を誘導し、過剰炎症や組織損傷に関与します。

C5AR1標的薬の開発でヒト化マウスが重要な理由は何ですか?

ヒトC5AR1とマウスC5AR1にはタンパク質配列や立体構造の差があり、ヒト特異的な抗体や小分子化合物を野生型マウスで正確に評価できない場合があります。huC5AR1ヒト化マウスは、親和性、PK/PD、薬効、安全性評価のトランスレーショナルな信頼性を高めます。

CyagenのhuC5AR1モデルはどのような研究に使えますか?

huC5AR1ヒト化マウス(C001714)は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アルツハイマー病関連神経炎症、腫瘍病態など、C5AR1が関与する炎症性疾患および腫瘍免疫研究に利用できます。

参考文献

[1] Biogen. (2025, October 24). Biogen Licenses Oral C5aR1 Antagonist from Vanqua Bio to Expand Immunology Portfolio [Web]. GlobeNewswire.

[2] U.S. Food and Drug Administration. (2026, March 31). FDA identifies cases of serious liver injury in patients taking Tavneos (avacopan) for severe active anti-neutrophil cytoplasmic autoantibody (ANCA)-associated vasculitis. U.S. Food and Drug Administration.

[3] InflaRx. (2026, May 11). InflaRx Reports Favorable Reactive Metabolite Profile for Izicopan in Human Liver Microsomes. InflaRx.

[4] Xu B, Zhou Z, Xiao Y, Liu Q, Xiao T, Lv Z, Wang H. The Pleiotropic Effect of Complement C5a-C5aR1 Pathway in Diseases: From Immune Regulation to Targeted Therapy. Int J Mol Sci. 2025 Dec 3;26(23):11693.

[5] Trambas IA, Coughlan MT, Tan SM. Therapeutic Potential of Targeting Complement C5a Receptors in Diabetic Kidney Disease. Int J Mol Sci. 2023 May 15;24(10):8758.

[6] van Straalen KR, Dudink K, Aarts P, van der Zee HH, van den Bosch TPP, Giang J, Prens EP, Damman J. Complement activation in Hidradenitis suppurativa: Covert low-grade inflammation or innocent bystander? Front Immunol. 2022 Sep 21;13:953674.

[7] Yan S, Chen W, Wen S, Zhu W, Guo A, Chen X, Zhang C, Chen M, Zhang J, Su J, Zhao Y, He Y, Liu Z, Zhou H, Zeng W, Li J, Chen X. Influence of component 5a receptor 1 (C5AR1) -1330T/G polymorphism on nonsedating H1-antihistamines therapy in Chinese patients with chronic spontaneous urticaria. J Dermatol Sci. 2014 Dec;76(3):240-5.

[8] Ye B, Chen B, Guo C, Xiong N, Huang Y, Li M, Lai Y, Li J, Zhou M, Wang S, Wang S, Yang N, Zhang H. C5a-C5aR1 axis controls mitochondrial fission to promote podocyte injury in lupus nephritis. Mol Ther. 2024 May 1;32(5):1540-1560.

[9] Gong XJ, Huang J, Shu Y, Wang M, Ji J, Yang L, Zhao MH, Cui Z. Complement C5a and C5a receptor 1 mediates glomerular damage in focal segmental glomerulosclerosis. Clin Immunol. 2025 Apr;273:110459.

[10] Schartz ND, Liang HY, Carvalho K, Chu SH, Mendoza-Arvilla A, Petrisko TJ, Gomez-Arboledas A, Mortazavi A, Tenner AJ. C5aR1 antagonism suppresses inflammatory glial responses and alters cellular signaling in an Alzheimer's disease mouse model. Nat Commun. 2024 Aug 15;15(1):7028.

[11] Beach C, MacLean D, Majorova D, Melemenidis S, Nambiar DK, Kim RK, Valbuena GN, Guglietta S, Krieg C, Darvish-Damavandi M, Suwa T, Easton A, Hillson LV, McCulloch AK, McMahon RK, Pennel K, Edwards J, O'Cathail SM, Roxburgh CS, Domingo E, Moon EJ, Jiang D, Jiang Y, Zhang Q, Koong AC, Woodruff TM, Graves EE, Maughan T, Buczacki SJ, Stucki M, Le QT, Leedham SJ, Giaccia AJ, Olcina MM. Improving radiotherapy in immunosuppressive microenvironments by targeting complement receptor C5aR1. J Clin Invest. 2023 Dec 1;133(23):e168277.

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カタログ番号名称ベース系統操作
C001714huC5AR1C57BL/6NCya
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