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免疫学

IL-33/ST2/IL1RAP標的療法とCOPD創薬:ヒト化マウスモデルで前臨床研究を支援

Cyagen Technical Content Team | June 01, 2026
当社のIL-33ヒト化マウスモデルをご紹介
ヒトIL-33遺伝子およびタンパク質の安定した発現を実現するモデルにより、抗IL-33治療薬の研究開発を加速します。
当社のIL-33ヒト化マウスモデルをご紹介
目次
01. COPDにおける未充足医療ニーズとIL-33標的療法の重要性 02. 作用機序:炎症シグナルの上流スイッチとしてのIL-33/ST2/IL1RAP 03. IL-33治療薬の進化:単一標的抗体から多経路協調遮断へ 04. COPDを超えたIL-33/ST2軸:自己免疫、腫瘍免疫、心血管リスク層別化 05. IL1RAP(IL1R3)標的化:広域抗炎症・腫瘍免疫戦略の共通補助受容体ハブ 06. サイヤジェンのIL-33/ST2/IL1RAPヒト化マウスモデル 07. ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas 08. サイヤジェン(Cyagen)について 09. FAQ 10. 参考文献

4月20日、AstraZenecaは抗IL-33モノクローナル抗体Tozorakimabについて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象とした第III相MIRANDA試験で主要評価項目を達成したと発表しました[1]。3月に第III相OBERON試験およびTITANIA試験で良好なトップライン結果が示されたことに続き、Tozorakimabにとって3件目の重要な成功であり、IL-33経路を標的とする治療薬開発における大きな前進といえます。

一方で、この標的の臨床開発は常に順調だったわけではありません。

IL-33抗体:RegeneronとSanofiのItepekimabは、元喫煙者または増悪リスクの高いサブグループで有効性が示唆されたものの、主要な第III相試験で主要評価項目を達成できませんでした。AnaptysBioのEtokimabも、有効性が不十分であったため開発が中止されています。

ST2抗体:RocheのAstegolimabは第IIb相試験で増悪率を15.4%低下させましたが、第III相ARNASA試験では統計学的有意差を示せませんでした。GSKのMelrilimabも有効性不足により早期に中止されています。

注目すべきは、Tozorakimab自体も過去に第II相FRONTIER-4(慢性気管支炎)およびFRONTIER-3(喘息)試験で課題に直面し、改善傾向は主に増悪リスクの高いサブグループで観察された点です。今回の3件連続の第III相成功は、COPDにおけるIL-33経路標的生物製剤としてのポジションを強固にするとともに、この治療領域全体への期待を再び高めています。

AstraZenecaによるTozorakimab第III相試験発表のスクリーンショット
図1. AstraZenecaによるTozorakimab第III相試験発表のスクリーンショット[1]。

COPDにおける未充足医療ニーズとIL-33標的療法の重要性

COPDは現在、世界の主要な死亡原因の一つであり、患者数は約4億人に上るとされています。標準治療として二剤または三剤併用の吸入維持療法が用いられているにもかかわらず、50%以上の患者で中等度から重度の急性増悪が発生します。さらに、初回の重度増悪後、3.5年以上生存する患者は約半数にとどまると報告されています[2-5]。そのため、炎症経路を根本から抑制し、急性増悪の頻度を低下させる新しい標的治療薬の開発が強く求められています。

COPDの世界的疾病負荷に関する統計
図2. COPDの世界的疾病負荷に関する統計。

作用機序:炎症シグナルの上流スイッチとしてのIL-33/ST2/IL1RAP

IL-1ファミリーに属するIL-33は、特徴的な「アラーミン」として機能します。機械的組織損傷、ウイルス感染、アレルゲン曝露などが起こると、IL-33はバリア組織細胞の核から細胞外へ速やかに放出されます。その生物学的機能は、ST2(IL1RL1)とIL1RAPからなるヘテロ二量体受容体複合体に強く依存しています。

さまざまな病態におけるIL-33シグナル経路の重要な役割
図3. さまざまな病態におけるIL-33シグナル経路の重要な役割[6]。

IL-33は一次受容体であるST2に結合すると、補助受容体IL1RAPをリクルートして三者複合体を形成します。この複合体はMyD88-NF-κBおよびMAPK経路を活性化し、2型サイトカインの大量放出を誘導します。つまり、IL-33/ST2/IL1RAP軸は自然免疫と適応性炎症をつなぐ重要な上流スイッチとして機能します[6-7]。

IL-33/ST2/IL1RAP複合体の構造と下流シグナル
図4. IL-33/ST2/IL1RAP複合体の構造と下流シグナル[7]。

IL-33治療薬の進化:単一標的抗体から多経路協調遮断へ

IL-33/ST2/IL1RAP軸は2型免疫と炎症において中心的な役割を果たすため、呼吸器疾患、自己免疫疾患、がん領域を横断する戦略的標的となっています。世界の製薬企業では、単一リガンドまたは受容体を中和するモノクローナル抗体から、IL-33×TSLP、IL-33×IL-4Rαなどの二重特異性抗体、さらに多経路を協調的に抑制する阻害薬へとパイプラインが進化しています。

IL-33/ST2標的に関する主要なパイプライン
図5. IL-33/ST2標的に関する主要なパイプライン。

Tozorakimabを例にすると、その競争優位性は、還元型IL-33と酸化型IL-33の両方のシグナルを同時に抑制できる点にあります。還元型IL-33(IL-33red)とST2の結合を阻害してST2依存性炎症シグナルを抑える一方、酸化型IL-33(IL-33ox)がRAGE/EGFR経路を介して上皮機能障害を誘導する過程も阻止します。この二重機序により、COPDの病態サイクルに対してより包括的に介入し、増悪リスクの高い患者に臨床的利益をもたらす可能性があります[8]。

Tozorakimabの二重阻害機序
図6. Tozorakimabの二重阻害機序[8]。

COPDを超えたIL-33/ST2軸:自己免疫、腫瘍免疫、心血管リスク層別化

自己免疫疾患:IL-33/ST2軸は、関節リウマチ、重症喘息、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎で有意に上昇していることが報告されています。この経路の遮断は、臨床試験において急性増悪の制御に高い可能性を示しています[9-10]。

腫瘍免疫:この経路は腫瘍微小環境(TME)において、文脈依存的な二面性を示します。軟部肉腫では良好な予後との関連が示される一方、急性骨髄性白血病(AML)ではT細胞疲弊を促進することが報告されています[11-13]。

代謝・心血管疾患:可溶性ST2(sST2)は心不全リスク層別化に用いられ、血清濃度が35 ng/mLを超える場合、心血管イベントのリスク上昇と関連します[14]。肥満および2型糖尿病患者の脂肪組織では、IL-33/ST2シグナルがインスリン感受性改善に関与する一方、循環中sST2濃度の上昇はメタボリックシンドロームの重症度と独立して相関します[15]。

IL1RAP(IL1R3)標的化:広域抗炎症・腫瘍免疫戦略の共通補助受容体ハブ

IL1RAP(IL1R3)は、IL-1、IL-33、IL-36という主要な炎症経路に共通する補助受容体です。IL-33シグナルに不可欠な構成要素であるだけでなく、広域の治療標的としても有望です。IL1R1、ST2、IL-36Rなどの一次受容体および各リガンドと三者複合体を形成すると、TIRドメインを介してMyD88/IRAK/TRAF6をリクルートし、NF-κB/MAPK経路を活性化して炎症カスケードとTMEリモデリングを促進します。

腫瘍免疫:IL1RAPはAMLや膵臓がん、NSCLCなどのさまざまな固形腫瘍で高発現しています。NadunolimabなどのIL1RAPを標的とするADCC増強抗体は、炎症性TMEを遮断しながら腫瘍細胞を選択的に除去する二重機序を示し、固形がんおよび血液がんの双方で大きな可能性を有します[16-19]。

広域自己免疫抑制:SAR445399やCAN10など、Fcサイレンス型のIL1RAP拮抗性モノクローナル抗体は、局面型乾癬や化膿性汗腺炎などにおいて、複数の炎症経路を広く抑制する可能性と良好な安全性プロファイルを示しています[20-21]。

IL-1、IL-33、IL-36経路に共通する補助受容体としてのIL1RAP
図7. IL-1、IL-33、IL-36経路に共通する補助受容体としてのIL1RAP[17]。
IL1RAP標的抗体医薬の主要パイプライン
図8. IL1RAP標的抗体医薬の主要パイプライン。

サイヤジェンのIL-33/ST2/IL1RAPヒト化マウスモデル

IL-33/ST2/IL1RAP経路を標的とする治療薬の前臨床検証を包括的に支援するため、サイヤジェン(Cyagen)はこれら3つの中核標的をカバーするヒト化マウスモデルシリーズを開発しています。

製品名製品番号用途
hIL33マウスC001722IL-33標的薬の薬効評価および炎症機序解析
huIL1RL1(IL33R/ST2)マウスC001632ST2依存性シグナルおよび抗体評価
hIL1RAPマウスC001631IL1RAPを介する炎症・腫瘍免疫研究

hIL33マウスモデル(製品番号:C001722)

in vivoにおけるヒトおよびマウスIL33遺伝子・タンパク質発現の検出
図9. in vivoにおけるIL33遺伝子およびタンパク質発現の検出。

huIL1RL1(IL33R/ST2)マウスモデル(製品番号:C001632)

in vivoにおけるヒトおよびマウスIL1RL1遺伝子・タンパク質発現の検出
図10. in vivoにおけるヒトおよびマウスIL1RL1遺伝子とタンパク質発現の検出。

hIL1RAPマウスモデル(製品番号:C001631)

各組織におけるヒトおよびマウスIL1RAP遺伝子・タンパク質発現の検出
図11. 各組織におけるヒトおよびマウスIL1RAP遺伝子とタンパク質発現の検出。

サイヤジェンが臨床応用への橋渡しを支援

IL-33がCOPDの炎症サイクルを駆動し、ST2およびIL1RAP複合体が微小環境リモデリングを仲介することから、この重要なシグナル軸は呼吸器疾患、自己免疫、腫瘍学の研究開発ランドスケープを大きく変えつつあります。

多国籍製薬企業による継続的な進展は、IL-33経路の臨床的な創薬可能性を裏付けています。サイヤジェンは前臨床ニーズに対応し、ヒト遺伝子およびタンパク質の高忠実度かつ安定した発現を実現するIL33、ST2、IL1RAPヒト化モデルを提供しています。これらのモデルは、COPDや喘息などの呼吸器疾患における拮抗抗体の薬効評価だけでなく、AMLやPDACなどの腫瘍免疫に関する深い機序解析にも有用です。

IL-33経路が後期臨床開発段階へ進むなか、堅牢なヒト化モデルシステムは、初期探索段階のリスク低減と次世代の炎症標的療法および腫瘍免疫療法の開発支援に不可欠です。

次のトランスレーショナル研究プログラムに、サイヤジェンのIL33、IL1RL1/ST2、IL1RAPヒト化マウスモデルをご活用ください。

ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas

MouseAtlas(マウスアトラス)は、KOマウスからヒト化マウスまで、遺伝子や製品モデル名で検索できるプラットフォームです。生体マウスか精子凍結状態か、リアルタイムの在庫状況、検証データ、詳細な説明を直感的に確認でき、直接注文も可能です。社内の製品管理システムと連携して常に最新情報が更新されており、現在39,000種類以上のモデルマウスを収録しています。研究者の皆様にとって非常に便利なワンストップソリューションです。

>> MouseAtlasで目的の遺伝子を検索する

サイヤジェン(Cyagen)について

Cyagen Biosciences Inc.(「サイヤジェン(Cyagen)」)は2006年、医薬品開発業務受託機関及び細胞関連製品メーカーとして創業しました。現在、世界に1000名以上の社員が勤務しています。本社をアメリカ・カリフォルニア州シリコンバレーに置き、中国の蘇州と広州を製造拠点にしています。2016年に日本支店(サイヤジェン株式会社)を開設しました。遺伝子改変アニマルモデル作製のリーディングカンパニーとして、リーズナブルな価格帯で、高品質の試薬・ツールを提供しています。Cyagenはマウスモデルの提供だけでなく、眼科、神経科学、腫瘍免疫など様々な分野で契約研究機関(CRO)サービスも提供しています。私たちは遺伝性疾患の研究を支援し、遺伝子治療薬の開発を促進することを目指しています。

FAQ

IL-33/ST2/IL1RAP軸はCOPD研究でなぜ注目されていますか?

IL-33は組織損傷や感染、アレルゲン曝露に応答して放出されるアラーミンであり、ST2とIL1RAPを介してMyD88-NF-κBおよびMAPK経路を活性化します。この上流シグナルは2型炎症や急性増悪に関わるため、COPDにおける新しい治療介入点として注目されています。

Tozorakimabの特徴は何ですか?

Tozorakimabは抗IL-33モノクローナル抗体で、還元型IL-33によるST2依存性シグナルだけでなく、酸化型IL-33がRAGE/EGFR経路を介して誘導する上皮機能障害も抑制する設計が特徴です。

IL1RAPを標的とする意義は何ですか?

IL1RAPはIL-1、IL-33、IL-36経路に共通する補助受容体であり、複数の炎症経路のハブとして機能します。そのため、広域の抗炎症戦略や腫瘍微小環境の制御に向けた標的として検討されています。

ヒト化マウスモデルはIL-33関連創薬にどのように役立ちますか?

ヒトIL33、IL1RL1/ST2、IL1RAPを発現するヒト化マウスモデルは、ヒト特異的抗体や阻害薬の薬効、標的結合、組織反応をin vivoで評価するための前臨床プラットフォームとして有用です。

参考文献

[1] AstraZeneca. (2026) Tozorakimab met primary endpoint in Phase III MIRANDA trial in patients with COPD. AstraZeneca Press Release.

[2] Montes de Oca M et al. (2025) The global burden of COPD: epidemiology and effect of prevention strategies. Global Epidemiol Chronic Respir Dis. 13(18):709-724.

[3] WHO. (2024) The top 10 causes of death. WHO Fact Sheet.

[4] Chen S et al. (2018) Symptomatic burden of COPD for patients receiving dual or triple therapy. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 13:1365-1376.

[5] Singh D et al. (2024) Implications of cardiopulmonary risk for the management of COPD: a narrative review. Adv Ther. 41:2151-2167.

[6] Sheng F et al. (2025) IL-33/ST2 axis in diverse diseases: regulatory mechanisms and therapeutic potential. Front Immunol. 16:1533335.

[7] Riera-Martínez L et al. (2023) The role of IL-33/ST2 in COPD and its future as an antibody therapy. Int J Mol Sci. 24(10):8702.

[8] England E et al. (2023) Tozorakimab (MEDI3506): an anti-IL-33 antibody that inhibits IL-33 signalling via ST2 and RAGE/EGFR to reduce inflammation and epithelial dysfunction. Sci Rep. 13(1):9825.

[9] Griesenauer B et al. (2017) The ST2/IL-33 axis in immune cells during inflammatory diseases. Front Immunol. 8:475.

[10] Mok MY et al. (2010) Serum levels of IL-33 and soluble ST2 and their association with disease activity in systemic lupus erythematosus. Rheumatology. 49(3):520-527.

[11] Kang BH et al. (2025) Unlocking IL-33: new insights into tumor immunity. Immune Netw. 25(5):e36.

[12] Che K et al. (2025) IL-33 in cancer immunotherapy: pleiotropic functions and biological strategies. Cytokine Growth Factor Rev. 85:81-92.

[13] Chen H et al. (2018) Integrated expression profiles analysis reveals correlations between the IL-33/ST2 axis and CD8+ T cells, regulatory T cells, and myeloid-derived suppressor cells in soft tissue sarcoma. Front Immunol. 9:1179.

[14] Chen J et al. (2022) Growth stimulation expressed gene 2 (ST2): clinical research and application in cardiovascular related diseases. Front Cardiovasc Med. 9:1007450.

[15] Missous G et al. (2024) Circulating interleukin-33 levels in obesity and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Am J Physiol Endocrinol Metab. 327(6):E686-E699.

[16] Garlanda C et al. (2025) IL-1 family cytokines in inflammation and immunity. Cell Mol Immunol. 22(11):1345-1362.

[17] Frenay J et al. (2022) IL-1RAP, a key therapeutic target in cancer. Int J Mol Sci. 23(23):14918.

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[20] Fields JK et al. (2024) Antibodies targeting the shared cytokine receptor IL-1 receptor accessory protein invoke distinct mechanisms to block all cytokine signaling. Cell Rep. 43(5):114099.

[21] Meijs A et al. (2025) The novel, first-in-class IL-1R3 antagonist SAR445399 reduces skin inflammation in an innovative proof-of-mechanism study with dual immune challenge models and comparator drugs. Sanofi Medical Congress.

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