サイヤジェンのAI-AAV研究成果、『Molecular Therapy Advances』の表紙に採用|眼科遺伝子治療の送達戦略に新たな可能性


研究成果が『Molecular Therapy Advances』表紙に採用
サイヤジェンの遺伝子治療研究チームは、AI駆動型AAV探索プラットフォームと網膜への遺伝子送達戦略に関する研究成果を発表しました。研究論文「AI-engineered AAV Capsid Enables Intravitreal Delivery for the Treatment of Diverse Retinal Degenerations」は2026年7月に『Molecular Therapy Advances』へ掲載され、革新性とトランスレーショナルな可能性が評価され、同誌2026年9月号の表紙に採用されました。研究では、眼科領域を対象とした新規AAVバリアントAAV2.PN168を報告し、硝子体内投与による網膜遺伝子送達の効率向上を目指した技術的アプローチを示しています。

『Molecular Therapy Advances』2026年9月号の表紙。
『Molecular Therapy Advances』2026年9月号の表紙から見る研究成果
今号の表紙には、AIエンジニアリングによって改変したAAV2バリアントを硝子体内投与して約1か月後に採取したカニクイザルの視神経束の高倍率顕微鏡画像が使用されています。オレンジ色はAAVを介した導入遺伝子発現、青色はDAPIによる細胞核染色を示します。画像は論文著者の崔漠尘博士と張倩博士がLeica THUNDERイメージングシステムを用いて取得したもので、AAV投与後の視神経領域における遺伝子発現分布を可視化しています。
硝子体内投与:眼科遺伝子治療における重要な送達ルート
網膜下腔注射は標的組織へ比較的直接的に送達できる一方、手技が複雑で網膜組織への侵襲を伴う場合があります。これに対し硝子体内投与は、比較的簡便で低侵襲性が期待され、臨床応用の可能性が広い投与経路として注目されています。
AAV2.PN168:眼部の生理的バリアを越えるためのカプシド設計
硝子体内に投与されたAAVは、硝子体や網膜内境界膜など複数の生理的バリアを越え、網膜の機能細胞へ到達して遺伝子を導入する必要があります。従来型AAVでは、組織透過性、導入効率、発現範囲などが課題となる場合があります。サイヤジェンの研究チームはAIを活用したカプシドエンジニアリングを用いてAAV2を改良し、眼科領域向けAAVバリアントAAV2.PN168を選抜しました。

カニクイザル網膜の各領域における光受容細胞導入効率の比較。
げっ歯類から非ヒト霊長類へ:眼部送達を段階的に検証
AAV2.PN168の眼部送達性能と安全性を評価するため、げっ歯類モデルと非ヒト霊長類モデルを組み合わせた検証体系を構築しました。蛍光レポーター遺伝子の発現を主要な評価指標として、網膜の異なる領域や組織層における導入分布と発現効率を評価しました。カニクイザルでは硝子体内投与後21日に眼組織を採取し、免疫蛍光解析を実施しました。3匹すべての組織切片でGFP発現が確認され、黄斑部、中央網膜、周辺網膜を含む主要領域に広く分布していました。全眼球切片の解析からも、局所的な発現に限定されず、網膜全体への遺伝子導入が観察されました。

カニクイザルの硝子体内投与試験と眼底蛍光イメージング結果。
非ヒト霊長類で確認された眼部安全性
投与前後の眼底画像を比較したところ、試験期間を通じてカニクイザルの眼部状態は安定しており、明らかな異常変化は確認されませんでした。非ヒト霊長類モデルで硝子体内投与による網膜への広範な遺伝子発現が確認されたことは、今後の用量最適化、長期的な有効性観察、機能評価、安全性研究を進めるための基礎情報となります。
AIでAAVカプシド開発を加速:多目的な候補探索と予測
AAVカプシドは、組織指向性、送達効率、生産特性、免疫学的特性などを左右する重要な要素です。従来の指向性進化や実験スクリーニングでは、ライブラリー規模、スクリーニングスループット、開発期間などの制約から、複数の性能目標を同時に最適化することが容易ではありません。サイヤジェンはAI-AAVの多目的反復スクリーニング基盤を構築し、AAV変異体の性能予測と候補選抜を支援しています。脳指向性、全眼発現、眼組織透過性など異なる研究目的に応じたカプシド設計・最適化への活用を進めています。

AAVカプシド収量予測モデル。
AAVカプシド収量予測モデル
その取り組みの一環として、サイヤジェンはAAVベクター改変に関連する研究を支援する「AAVカプシド収量予測モデル」を公開しています。AIを活用した予測によって、候補AAVの研究開発における評価・選抜を支援し、AAVカプシドエンジニアリングへのAI活用を進めています。
AIによる設計からトランスレーショナルな検証へ
AIを活用したカプシド設計、非ヒト霊長類モデルでの可視化検証、さらに疾患モデルを用いた評価へとつなげることで、AAVによる遺伝子送達研究の検証基盤を構築できます。今回の研究成果は、眼科遺伝子治療における硝子体内投与の送達戦略と、AIを活用したAAVカプシド開発の組み合わせを示す研究例の一つです。サイヤジェンは今後もAI技術と遺伝子治療ベクターエンジニアリングの融合を進め、眼科を含むさまざまな疾患領域における遺伝子送達研究を支援していきます。
関連プラットフォームと会社情報
ワンストップ・マウスモデル検索プラットフォーム:MouseAtlas
MouseAtlas(マウスアトラス)は、KOマウスからヒト化マウスまで、遺伝子や製品モデル名で検索できるプラットフォームです。生体マウスか精子凍結状態か、リアルタイムの在庫状況、検証データ、詳細な説明を確認でき、直接注文も可能です。社内の製品管理システムと連携して最新情報が更新されており、現在39,000種類以上のモデルマウスを収録しています。
サイヤジェン(Cyagen)
Cyagen Biosciences Inc.(「サイヤジェン(Cyagen)」)は2006年に創業し、遺伝子改変動物モデル、細胞関連製品、CROサービスなどを提供しています。日本支店は2016年に開設され、研究者の皆様に高品質な研究ツールとサービスを提供しています。
FAQ
AAV2.PN168とは何ですか。
AAV2をベースにAIを活用したカプシドエンジニアリングによって選抜された眼科領域向けAAVバリアントです。
なぜ硝子体内投与が眼科遺伝子治療で注目されていますか。
硝子体内投与は網膜下腔注射と比べて手技が比較的簡便で、低侵襲性や臨床応用の可能性が期待されるためです。
AAV2.PN168はどのように評価されましたか。
げっ歯類とカニクイザルを用いて、蛍光レポーター遺伝子の発現分布や導入効率、眼部の状態を評価しました。
AI-AAVプラットフォームでは何ができますか。
AAV変異体の多目的スクリーニングや性能予測を支援し、脳指向性、全眼発現、眼組織透過性などの研究目的に応じたカプシド設計・最適化に活用できます。
AAVカプシド収量予測モデルとは何ですか。
AAVベクター改変に関連する研究で、カプシド候補の収量を予測し、候補評価や選抜を支援するAIベースの研究ツールです。
AI-AAV研究プラットフォームを利用するにはどうすればよいですか。
サイヤジェンのAI駆動型AAV探索プラットフォームから登録手続きを行い、研究用途に応じたAAVカプシド探索・予測機能をご利用いただけます。



