「文献精読」腸上皮細胞はMHC IIとPD-L1を発現することで上皮内リンパ球の分化を調節する


目次
01 IELsの分化にはIECsのMHC IIの発現が必要である 02 MHC IIのIECsにおける発現はIFN-γの存在に依存する 03 IECsでIFN-γの誘導により生成されたPD-L1はDP IELs分化において重要な役割を果たす 04 微生物群は小腸におけるMHC IIとPD-L1の発現及びDP IELsの分化に極めて重要である 05 PD-1信号は、ThPOKの発現を抑制することによってDP IELsの分化を刺激するサイヤジェン株式会社のPD-L1コンディショナルノックアウトマウスは免疫、腸管微生物の研究を助力する。
腸管は人体の重要な消化吸収場所であり、最も大きな免疫器官でもある。腸管微生物群、免疫細胞と粘膜バリアから腸上皮の定常状態になり、人体健康の重要な防御線の一つである。ここで一緒にJournal of Experimental Medicineの雑誌に掲載された文献を詳しく読みます。当該研究は、小腸上皮細胞(IEC)を通じてT細胞分化(IEL、上皮内リンパ球)を調節する分子機制を初めて掲示した。また、研究によると、微生物群が小腸のMHCII、PD-L1及びIELの上皮分化にとって極めて重要であることが分かった。
小腸では、経典的CD4+-T細胞をCD4+CD8αα+上皮内リンパ球(intraepithelial lymphocytes, IELs)に分化することができるが、その周りの小腸上皮細胞(intestinal epithelial cells,IECs)の役割はまだ明確ではない。近日、Dr.Moonが率いる韓国チームの研究によると、小腸の遠端で、IECsが微生物群とIFN-γの刺激によりMHC II種の分子とプログラムされた細胞死リガンド-1(programmed death ligand-1,PD-L1)を発現し、ニッチ(niche)適応信号を提供し、CD4+CD8αα+IELs(DP IELs)の分化を促進することができる。この研究結果は最近のJournal of Experimental Medicine誌に発表された[1]。
IELsの分化にはIECsのMHC IIの発現が必要である
IECsがDP IELsの分化過程で非典型的なAPCの役割を果たしていることを探究するために、研究者たちはC57BL/6野生型マウスの小腸の異なる部位で、MHC IIのIECsにおける発現状況を分析した。一連のフロー試験、RNA-seq実験はIECsのDP IELsの分化過程における作用がMHC II抗原提示と関連していることを示している。また、IECsが発現するMHC IIのDP IELs分化における役割を明らかにするために、研究者たちはIECsにおいて1種のMHC IIを特異的にノックアウトしたマウス(MHC II△IEC)を使用し、MHC IIfl/fl対照群のマウスに比べ、IELsの分化にIECsのMHC IIの発現が必要であることを確認した(図1G-H)。
図1G-H. フローサイトメトリー(G)および蛍光免疫染色実験(H)により、MHC II△IECマウスではSP IELs細胞中のDP IELsの割合がMHC IIfl/flマウスと比較して著しく低下していることが示された。蛍光免疫染色実験(H)では、DP IELsの大部分がMHC IIを高発現する上皮細胞の基底外側面に接触していることも確認された。
MHC IIのIECsにおける発現はIFN-γの存在に依存する
IFN-γが非造血細胞(IECsなど)でMHC IIの発現を強く誘導できるという報道がある。この結論をさらに検証するために、研究者たちはIFN−γ受容体をノックアウトしたマウス(IFN-γR−/−)を使用した。結論は先人の実験結果と一致している。IFN-γR−/−マウスのIECsで、MHC IIの発現が検出されておらず、DP IELsの分化がひどく妨害され、SP T細胞における割合はほとんど0(図2A)である。野生型マウスにおいて、anti-IFN-γ抗体を添加した後、MHC IIの発現レベルもSP IELs細胞におけるDPの割合も著しく低下する(図2B)。さらに、IFN−γはDP IELsの分化に必要なものであるという報道がある。これは、転写因子T−betの発現を誘導することによって、DP IELsの分化を促進することができる。IFN−γがDP IELsの機能成熟において重要な役割を果たしていることを示している。
図2. IFN-γは非造血細胞(IECsなど)におけるMHC IIの発現を強く誘導する。
IELsとIECsでIFN-γがDP IELs分化に与える影響を探究するために、研究者たちは骨髄(Bone marrow,BM)キメラマウスを作製した。ドナーマウスの足骨からBM細胞を取って、静脈注射で致死線量の照射を受けたマウスの体内(ドナーマウスの造血細胞→受けマウス)に注入し、8週間の造血再構築の後にマウスを殺す。その結果(図2C):造血細胞(CD4+IELsなど)と非造血細胞(IECsなど)のいずれも、DP IELsの分化には完全なIFN−γR信号が必要である。また、以前に野生型マウスで観察された異なる小腸部位におけるMHC IIの発現量とDP IELsの比率の明らかな差異はBMキメラ型マウスで観測されなかった。これは免疫再構築後のマウスが安定状態よりもIFN-γが多く発生したためではないかと研究者たちは推測されたが、これは腸の微小環境を変えて炎症を起こし、このような地域的な違いを解消した。
図2C. 完全なIFN-γRシグナルはDP IELsの分化に不可欠である。
MHC II+IECsがDP IELs分化において非典型的なAPCの役割を果たしているかを直接的に探究するために、研究者たちはIFN-γR+/+マウスとIFN-γR−/−マウスから由来する小腸オルガノイド(orgnoids)をそれぞれ構築した。彼らはまずIFN-γがオルガノイドで体内と一致する効果を発揮することを検証された。IFN-γはオルガノイドでIECsのMHC IIの発現を強力に誘導できる(図2D-E)。また、T-box expressed in T cells (T-bet)はDP IELsの分化過程において重要な上流制御因子であり、Runx3の発現を誘導してThPOKの発現を抑制することができるという研究結果がある。T-betの誘導で産生したサイトカイン(IFN-γなど)は腸内の微小環境刺激因子の存在でDP IELsの分化をさらに促進することができる。そのため、研究者たちは、腸内の微小環境刺激因子TGF-βとレチン酸(Retinoic acid, RA)が存在する場合、IFN-γと卵白アルブミンポリペプチド(ovalbumin peptide,OVAp)によって予備刺激された小腸オルガノイドと、anti-CD3ε/CD28によって予備刺激されたOVA特異性CD4+T細胞(OT-II)を24h培養する(図2F)。その結果、IFN-γはMHC IIの大量発現を誘導することができ、MHC II+IECsはDP IELs分化において非典型的なAPCの役割を果たし、TGF-βとRA刺激はさらにDP IELsの分化を促進することができる。
図2D-E. フローサイトメトリー(D)および蛍光免疫染色実験(E)により、IFN-γ刺激後、IFN-γR+/+マウス由来オルガノイドIECsではMHC IIの発現レベルが顕著に上昇するが、IFN-γR−/−マウス由来ではMHC IIの発現が認められない。
図2F-G. 共培養実験(F);IECsのMHC II発現(G左);SP OT-II細胞中のDP比率(G右)。
IECsでIFN-γの誘導により生成されたPD-L1はDP IELs分化において重要な役割を果たす
上記の実験によって、MHC II+IECsがAPCとしてCD4+IELsを同源刺激することができることが分かった。研究者たちはそれらがMHC IIと一緒にT細胞の受容体を調整することができると推測している。また、MHC IIのIECsにおける発現はIFN-γの存在に依存しているので、これらの共受容体はIECsのIFN-γ信号に関連していると研究者たちはさらに推測された。IFN-γで処理した小腸オルガノイド或いは処理していない小腸オルガノイドに対してRNA-seq分析を行い、研究者たちはPD-L1タンパクをコードするCd274がMHC IIに関連する遺伝子の発現と著しく相関していることを発見された(図3A-B)。オルガノイド実験(図3C)と体内実験(図3D-E)はいずれもIFN-γがPD-L1の発現量に著しく影響すると示している。DP IELsの分化にIECsのPD-L1の発現が必要であることをさらに確認するために、研究者たちは、PD-L1ノックアウトマウス(PD-L1−/−)、RAG−1ノックアウトマウス(RAG-1−/−。マウスは成熟したT、B細胞がない)、IECsで特異的にPD−L1をノックアウトしたマウス(PD-L1△IEC)、及びサイヤジェン株式会社が作製したPD-L1fl/flの対照を使用した。一連の実験結果(図F−H)は、DP IELs分化においてIECsのPD−L1が重要な役割を果たしていることを示している。
図3A-B. 発現量が異なる遺伝子のヒートマップ(A)およびボルケーノプロット(B)。
図3C-E. (C) 異なる濃度のIFN-γ処理後の小腸オルガノイドにおけるPD-L1の発現量;(D) IFN-γR−/−マウスではIFN-γR+/+マウスと比較してPD-L1の発現量が著しく低下;(E) IFN-γR+/+マウスに抗IFN-γ抗体を投与後、IECs上でのPD-L1発現量が著しく低下。
図3F-H. (F) PD-L1+/+マウスと比較して、PD-L1−/−マウスの回腸におけるDP IELsの割合が著しく低下;(G) RAG-1−/−マウスに脾臓CD4+ T細胞を注入後、抗–PD-1処理によりDP IELsの発達が阻害;(H) PD-L1fl/flマウスと比較して、PD-L1△IECマウスの回腸におけるDP IELsの割合が著しく低下。
微生物群は小腸におけるMHC IIとPD-L1の発現及びDP IELsの分化に極めて重要である
小腸におけるIFN-γの発生及びIECsのMHC IIの発現に微生物群が必要であるという報道がある。IECsのPD-L1の発現が微生物群によって調節されているかを探究するために、研究者たちは無菌(Germ-free,GF)マウス、特定病原体がない(specific pathogen–free,SPF)マウスを使って実験を行った。これらの実験結果は、微生物群が誘導したIFN−γがIECsを刺激してMHC IIとPD−L1を生成し、この両者はDP IELsの分化を調節することができることを示している。
図4A. SPFマウスと比較して、GFマウスの回腸IECsにおけるPD-L1発現レベルが著しく低下しており、小腸各部位におけるMHC IIの発現量とDP IELsの割合も顕著に低下、特に回腸で顕著。
図4B. 抗生物質処理後、SPFマウスの回腸IECsにおけるPD-L1発現レベルが著しく低下し、小腸各部位におけるMHC IIの発現量とDP IELsの割合も顕著に低下、特に回腸で顕著。
図4C. 蛍光免疫染色実験により、SPFマウスの回腸IECsの多くがMHC IIを発現し、20%がPD-L1を発現しているのに対し、GFマウスではMHC IIおよびPD-L1の発現が著しく低下。
PD-1信号は、ThPOKの発現を抑制することによってDP IELsの分化を刺激する
経典的CD4+T細胞とCD8+T細胞はそれぞれT helper–inducing POZ/Krüppel-like factor(ThPOK)とrunt-related transcription factor 3(Runx3)を発現することによって自身の家系を維持する。したがって、DP IELsの分化には、Runx3の発現量の引き上げとThPOKの欠失が必要である。さらに、IECsのMHC IIおよびPD−L1の発現は、DP IELsの分化に極めて重要である。これはTCRおよびPD−1の放出信号はCD4+IECsの細胞再プログラムに参与している可能性があることを示している。前期の実験結果はT細胞の内因性のPD-1信号がDP IELsの分化にとって必須であることを示した(図5A−C)。その中の分子メカニズムをさらに探究するために、研究者たちはThPOK-GFPレポーターマウスを使用した。実験結果は、PD-1がThPOK発現の抑制とDP IELsの分化にPD−1信号が必要であることを示している(図5D-E)。また、体外実験結果(図5G-I)は、PD−1信号が、経典的Src homology 2 domain–containing tyrosine phosphatase (SHP)通路を通してCD4+IECsのThPOKの発現を低減し、DP IELsの分化を促進する。
図5A-C. (A) C57BL/6野生型マウスにおける異なるIELサブグループでのPD-1発現。SP IELsがDP IELsに分化する際、PD-1発現が減少。 (B) PD-L1+/+マウスと比較して、PD-L1−/−マウスの小腸におけるDP IELsの割合が著しく低下。 (C) PD-L1+/+およびPD-L1−/−マウス由来脾臓CD4+T細胞を1:1で混合し、RAG-1−/−レシピエントマウスに移植。PD-L1−/−CD4+ T細胞由来のDP IELsの割合が著しく低下。
図5D-F. (D) 実験概要:ThPOK-GFPレポーターマウス由来脾臓T細胞をRAG-1−/−レシピエントマウスに移植し、再構築期間中に抗PD-1抗体処理を実施。(E) ThPOKおよびRunx3の発現レベル;(F) DP IELsの割合。
図5G-I. (G) CD4+T細胞、TGF-β、RA、PD-L1を3日間in vitroで共培養後、ThPOKhi細胞の割合を測定。PD-L1はThPOK発現の低下を媒介。 (I-H) CD4+T細胞、TGF-β、RA、PD-L1およびSHP阻害剤(SHPi)を3日間共培養後、DP IELsの割合およびThPOK/Runx3発現レベルを測定。
要約すれば、この文章で、IECsは腸内でDP IELsの分化を促進する重要なコントロール要因であり、非典型的なAPCの役割を果たしていることがわかった。腸内微生物群から発生するIFN-γは、IECsを刺激することによりMHC IIとPD-L1を発現し、SP IELsにTCR刺激と共受容体信号を提供し、DP IELsへの分化を促進することができる。また、研究者たちはまた、異なる生理位置のIECsの遺伝子発現パータンに違いがあり、その周りの組織常駐型免疫細胞(例えば、DP IELsの分化)にも影響を与えると発見された。
備考:文中のすべてのマウスはバックグラウンドがC57BL/6である。
人体の腸管微生物ゲノムは人類の第2セットのゲノムとして、人類の健康と密接に関連している。大量の研究は腸管微生物が心血管、腫瘍、免疫、神経、消化等を含む多種類の疾患の発生発展と密接に関連していることを示し、その因果関係も徐々に解明していく。サイヤジェン株式会社のオールインワンの革新的なCROプラットフォームは文中の遺伝子改変マウス、無菌マウス、無菌マウス技術サービスを提供し、動物モデルの多種類のニーズを満たします。ご興味をおもちいただけましたら、カスタマイズ作製しますのでお気軽にお問い合わせください。[email protected]
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原文検索:
[1]Moon S , Park Y , Hyeon S , et al. Niche-specific MHC II and PD-L1 regulate CD4+CD8αα+ intraepithelial lymphocyte differentiation[J]. Journal of Experimental Medicine, 2021, 218(4).
DOI:10.1084/jem.20201665
サイヤジェン株式会社について
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