10月29日は世界乾癬デーです。2026年の国際乾癬連盟のテーマは「Look Beyond My Skin」です。

乾癬は、免疫を介する慢性・再発性の全身性炎症性疾患です。皮膚だけの問題ではなく、患者では心血管疾患、メタボリックシンドローム、うつ病などの併存疾患もみられ、疾病負担は増え続けています。現在、乾癬を根治する方法はなく、治療では病勢のコントロール、再発の抑制、生活の質の向上を目指します。

経口TYK2阻害薬、経口IL-23R拮抗ペプチド、オリゴヌクレオチドなどの開発が急速に進むなか、新薬開発の課題も高度化しています。古典的なIL-23/Th17経路は依然として重要ですが、疾患表現型や標的の種差などにより、従来の動物モデルで陽性結果を得た候補薬が臨床応用に至らないことがあります。

前臨床評価に進む候補薬には、標的認識の種差を適合させるとともに、ヒト乾癬の免疫環境を再現し、信頼性の高い薬効・安全性評価を支えるモデルが必要です。

疾患モデルに求められる2つの要件

乾癬の発症には遺伝、免疫、環境など複数の要因が関与しますが、中心となる炎症回路は明らかになっています。樹状細胞の異常な活性化がIL-23/Th17軸を駆動し、IL-23がTh17細胞の増殖と維持を促してIL-17A/IL-17Fの産生につながります。さらに、角化細胞の過剰増殖と異常分化を引き起こし、免疫系と表皮の悪循環が形成されます。この経路を標的とする承認薬・開発薬は、IL-23p19、IL-12/23 p40、IL-17A、IL-17A/F、IL-17F、TYK2などに広がっています。

この病態メカニズムを踏まえると、前臨床モデルには2つの要件があります。

標的認識における種差の適合

一部の抗ヒトIL-23p19抗体は、マウス由来IL-23と交差反応しません。そのため、野生型マウスで薬効を評価しても、候補薬の標的結合やシグナル阻害を適切に反映できない場合があります。ヒト化モデルを用いることで、候補薬が生体内でヒト標的を認識し作用できるかを評価できます。

疾患表現型を定量できる評価系

標的が適合するモデルは、候補薬の作用機序を検証する基盤になります。一方、薬剤が皮膚病変や炎症を実際に改善するかは、体内モデルで定量的に確認する必要があります。IMQ誘導モデルでは、改良PASIスコア、脾臓指数、組織病理などの評価指標を利用できます。

モデル選択の推奨

遺伝子改変・ヒト化モデル

乾癬関連の標的には、IL-23/Th17軸、IL-17ファミリー、IL-22、IL-15RA、IL-18受容体複合体、TL1A/DR3、補体C5aR1などの経路が含まれます。

製品番号製品名対象疾患・研究領域
C001714huC5AR1乾癬、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性・自己免疫疾患、アルツハイマー病関連神経炎症、一部の腫瘍
C001715huIL17F乾癬、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)
C001796huTL1A/huIL23A/huIL12B炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などのアレルギー性・炎症性疾患、免疫関連疾患、がん
C001837huTL1A/huIL23A炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などのアレルギー性・炎症性疾患、免疫関連疾患、がん
C001847huIL22乾癬、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)などの自己免疫疾患、一部の悪性腫瘍、感染症
C001932huIL17A/huIL17F関節リウマチ(RA)、乾癬、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)
C001947huTL1A/huIL23A/huIL12B/Rag2-KO炎症性腸疾患(IBD)、乾癬などのアレルギー性・炎症性疾患、免疫関連疾患、がん
C001981huIL15RA関節リウマチ(RA)、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、各種血液悪性腫瘍
C002016huIL18R1/huIL18RAP炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、乾癬・皮膚炎症、代謝性疾患に伴う炎症機序
C002066huDR3(TNFRSF25)炎症性腸疾患(IBD)、アレルギー性喘息、乾癬を含む自己免疫疾患
C002137huIL18R1/huIL18RAP/huIL18BP炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、腫瘍免疫研究

疾患誘導モデル

IMQ誘導乾癬様皮膚炎モデルは、発症が速く、紅斑・鱗屑・皮膚肥厚など典型的な病変を示します。PASIスコアによる評価が可能で、肉眼的な皮膚病変、全身性炎症、組織病理を複数の観点から確認できます。薬効の初期スクリーニングや作用機序の検証に適しており、ヒト化背景との組み合わせも可能です。

2種類のモデルの役割は次のように整理できます。ヒト化モデルは候補薬によるヒト標的の認識と作用を確認し、誘導モデルは介入後の疾患表現型の改善を定量します。

モデルの検証

――IMQ誘導マウス背部乾癬モデルの例

1. 背部皮膚の変化

IMQ投与後のマウス背部皮膚の変化とPASIスコアの比較
図1. 治療開始から介入7日目までの背部皮膚の変化。(a)5%イミキモド軟膏62.5 mgを毎日背部に局所塗布すると、皮膚の粗造化、発赤、しわ、硬化を伴う斑状病変、重度の落屑・鱗屑などが認められ、典型的な乾癬様皮膚病変が確認されました。(b)PASIスコア。IMQ誘導後、モデル群では対照群と比べてPASIスコアが有意に上昇し、デキサメタゾン投与後にはモデル群より症状が軽減しました。

2. 臓器指数

対照群、IMQモデル群、デキサメタゾン投与群の脾臓と脾臓指数の比較
図2. 臓器指数。IMQ誘導後、対照群と比べて脾臓の明らかな腫大が認められました。デキサメタゾン投与後にはモデル群と比べて症状が有意に軽減しました。***、P<0.001。

3. 皮膚病理

IMQ誘導乾癬様皮膚炎の組織像、真皮厚および病理スコアの比較
図3. IMQ誘導後、対照群と比べて真皮層の厚さが明らかに増し、病理スコアも上昇しました。デキサメタゾン投与後にはモデル群と比べて症状が有意に軽減しました。表皮のMunro微小膿瘍:黄色矢印、過角化/不全角化:黒色矢印。***、P<0.001。

自己免疫・炎症モデル

乾癬は自己免疫疾患研究の一領域です。サイヤジェンは、IL-23/Th17、IL-17、TNF、IL-10、補体C5aR1、IL-18、OSM、IL-22、IL-15RAなどの経路を対象に、関節リウマチ、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、アトピー性皮膚炎・アレルギーなどを扱う遺伝子ノックアウト、点変異、ヒト化、誘導モデルを組み合わせています。標的や適応症に応じてモデルを選定できます。

皮膚、消化器、骨・関節、内分泌、呼吸器、多臓器、神経系を含む自己免疫・炎症モデル領域
図4. サイヤジェンが提供する自己免疫・炎症疾患モデルの研究領域。

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ヒト標的を用いた前臨床評価に

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よくあるご質問

抗ヒトIL-23p19抗体の評価に野生型マウスを用いにくいのはなぜですか?

一部の抗ヒトIL-23p19抗体はマウス由来IL-23と交差反応せず、野生型マウスでは候補薬の標的結合やシグナル阻害を適切に評価できないためです。

ヒト化モデルとIMQ誘導モデルはどのように使い分けますか?

ヒト化モデルでは候補薬がヒト標的を認識して作用するかを確認します。IMQ誘導モデルでは、介入後の皮膚病変や炎症の変化を定量的に評価します。

IMQ誘導乾癬様皮膚炎モデルでは何を評価できますか?

改良PASIスコア、脾臓指数、組織病理などにより、皮膚病変や全身性炎症を複数の観点から評価できます。