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アルツハイマー病(AD)の研究現状 - 遺伝子編集マウスモデル

Cyagen Technical Content Team | May 07, 2021
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目次

目次

01 アルツハイマー病の臨床研究現状 02 アルツハイマー病遺伝子編集マウスモデル

アルツハイマー病(Alzheimer Disease, AD)は、発症率と罹患率が最も高い神経変性疾患であり、記憶機能の喪失を中心とした様々な症状が病気の進行とともに悪化し、最終的には患者の死亡につながります。患者に苦しみをもたらし、身内に苦痛を与え、社会に大きな負担をかけます。

アルツハイマー病にかかった有名人およびその主な神経機能障害

図1. アルツハイマー病にかかった有名人およびその主な神経機能障害【1】

アルツハイマー病の臨床研究現状

過去20年間で、コリンシステムとグルタミン酸受容体を対象とした併用薬がFDAによって承認されたことことに加え、すでに終了している残りのAD臨床実験は例外なく失敗に終わりましたが、科学者と製薬会社は次々とAD薬の開発に力を入れています。2019年までに、2173件のAD臨床試験が進行中です。

アミロイド仮説についての臨床試験が最大の割合(約22.3%)を占めましたが、現在Aβをターゲットポイントとしている多くの薬物は、Aβを除去した後、患者の認知機能を改善していません。さまざまな神経伝達物質についての仮説が2番目にランク付けされています(約19.0%)。現在承認されている薬はすべてこの仮説に関連していますが、効果は非常に限られており、かつすぐに効果を失います。tau仮説は約12.7%を占めていますが、その臨床結果はAβ関連薬と類似し、認識を改善できません。臨床試験の約17.0%は、ミトコンドリアカスケード仮説および関連する仮説を対象としています。このような薬物は高度に標的化されていないという問題があります。現在、有望な薬物がありません。これは、社会的観点から、高齢化によるADの発症率の増加が避けられない問題になっていることを十分に示しています。経済的観点から、各大手製薬企業研究機関は、AD薬物の研究開発の潜在的な大きな利益を認めています。したがって、現在の研究が成功するかどうかに関係なく、新薬の開発は継続されます。

グローバルな 2019年のADに関する臨床試験

図2. グローバルな 2019年のADに関する臨床試験【2】

アルツハイマー病遺伝子編集マウスモデル

現在調べられているADマウスは全部で約194種類あります。未検証または非トランスジェニックモデルを除くと、論文でサポートされている遺伝子編集マウスは161種類あり、そのうち単一遺伝子編集は最も多いです。しかし、最も人気のあるのは、またマルチ遺伝子編集のADモデルです。

遺伝子編集ADマウスモデルの種類と数

図3. 遺伝子編集ADマウスモデルの種類と数【3】。この図で、緑は単一遺伝子改変のAD疾患モデルを示し、ブルーは二重遺伝子改変モデルを示し、赤はマルチ遺伝子改変モデルを示し、数字はモデル種類の数を示しています。

伝統的なアルツハイマー病モデル

種類別に計算すると、単一遺伝子編集動物の中で、APPを対象としたのが最も多く、次にtauのコーディング遺伝子MAPT、プレセニリンPS遺伝子とβ-せん断酵素BACEも一席を占めていますが、それらのほとんどはPS1またはBACE1を対象としており、研究者たちはPS2およびBACE2トランスジェニックマウスに熱意がないようです。ここで、APPとPS1は家族性AD患者で発見された突然変異であるため、厳密に言えば、これら2つの遺伝子を対象として設計したモデルこそ標準的なAD疾患モデルであることに注意する必要があります。BACE1遺伝子にはADを引き起こす可能性のある突然変異が存在しないため、BACE1関連マウスは適切なAD疾患モデルではありませんが、その機能への研究はADの発症メカニズムを深く理解することにも役立ちます。

APP家族性突然変異遺伝子は数十種類ありますが、最も一般的に使用されているのは4種類だけです(図4で赤いアスタリスクでマークされています)。APP家族性突然変異は、最初に発見された家族所在地の略語と呼ばれることがよくあります。たとえば、SWEはスウェーデンの家族で発見されたものであり、かつこの家族の中でAPPは2つのポイントで突然変異が発生しました。swe突然変異はすべてのAD遺伝子編集モード動物で最もよく使用されています。さらに、家族性ADのうち突然変異が最も多いPS1も、5種類の突然変異がよく使用されています。

これらの突然変異遺伝子を並べて組み合わせて発現させることにより、100種類以上のADトランスジェニックモデルマウスを得ることができます。その中で比較的に有名なものは単一トランスジェニックAPPsweのTg2576、およびダブルトランスジェニックのAPP/PS1△E9、5×FADです。その中で、5×FADマウスは最も強い病理学的表現型を有し、発症時間も非常に早いです。これは、3種類のAPP突然変異と2種類のPS1突然変異が導入されているためです。現在、導入された突然変異の数が最も多いADマウスです。注意が必要なのは、5×FADのAβ病理学的表現型は明らかですが、Aβせん断タンパク質と前駆体タンパク質APPを取り巻くすべての単一トランスジェニックマウスには神経原線維変化が形成されていないため、人々は前頭側頭葉変性症におけるMAPT突然変異( MAPTにおける突然変異は、tauタンパク質リン酸化の強化につながります)を導入し、APPでのSWEおよびPS1でのM146Vの突然変異と組み合わせて、3×TGマウスを構築し、 ADのすべての病理学的表現型を持ちます。

突然変異と疾患モデルマウス

図4. 突然変異と疾患モデルマウス

代表的なアルツハイマー病モデルの表現型

2012年のある要約では、一般的に使用されているADトランスジェニックマウスを纏めました。図5では、4種類のADマウスが太い黒線で区切られ、電気生理学的実験と行動実験では、背景色で区別されています。上方の電気生理学的実験には、基礎的なシナプスシグナル伝達機能( BST)、長期増強(LTP)および二発刺激による促通(PPF)が含まれます。下方の行動実験には、空間記憶行動(水迷路、バーンズ迷路などを含むSpatial Memory)、作業記憶(Working Memory、T/Y迷路など)および恐怖記憶(Fear Conditioning)が含まれます。また、ADの経過に対する年齢の影響により、著者は実験動物の年齢をさらに区別し、生後6ヶ月未満の若齢グループ、生後7〜12ヶ月の中年グループ、および生後12ヶ月以上の高齢者グループに分けています。赤と緑の各四角枠は一つの実験を表しています。同じ記事に複数の実験がある場合があります。実際、APP/PS1の6つの電気生理学的データは同じ論文におけるデータであり、3×TGの電気生理学的データも同じ論文での情報です。赤はトランスジェニックマウスの機能が対照と比較して損なわれていることを示し、緑は野生型対照との有意差がないことを示しています。

最も一般的に使用されるADマウスモデル

図5. 最も一般的に使用されるADマウスモデル【4】

全体的に言えば、電気生理学的実験は比較的少ないです。入手可能な唯一の情報は、PPFがAPP/PS1で損なわれ、他の3種類のマウスに変化がないことです。一方、加齢とともに、5×FADのBSTとLTPは明らかに影響を受けます。したがって、将来的に電気生理学的実験を行う必要がある場合、異なるトランスジェニックマウスのシナプス機能が異なる年齢で変化するかどうかを考慮する必要があるかもしれません。

電気生理学と比較して、行動学データははるかに豊富です。水迷路に代表される空間実験、T迷路に代表される作業記憶実験、および恐怖ボックス実験があります。図5から、Tg2576は12ヶ月齢で空間記憶と作業記憶が基本的に同じように損なわれていることがわかります。さらに、元の表を簡素化したため、実際、恐怖記憶は海馬依存性環境恐怖記憶と非海馬依存性音声恐怖記憶に分かれています。図の2つの緑色の四角い枠は、いずれも非海馬依存性実験です。海馬依存性実験のみを見ると、リストされている4種類のADマウスの12ヶ月齢後の実験は、記憶が損なわれていることを示しています。7〜12ヶ月齢のマウスの行動実験では、単一遺伝子過剰発現のTg2576の結果は矛盾が多いです。比較すると、残りのマルチトランスジェニックマウスの全体的な記憶は著しく損なわれました。

1〜6ヶ月のデータはより興味深いものです。この期間中のマウスの病気の進行が非常に速いため、さまざまな矛盾した結果があることは驚くべきことではありません。将来的には、より多くの法則を見つけることができるかどうかを確認するために、統計の時間をさらに細分化する必要があります。

ここで、恐怖記憶実験を行う場合、Tg2576は十分なデータによって蓄積されていることがわかります。これは、すべての年齢層のcontextual FCが深刻な影響を受けていることを示しており、海馬がより深刻な損傷を受けていることを示していますが、一方で、電気生理学表現型はあまり明らかではありません。

代表的なモデル以外のアルツハイマー病関連遺伝子

ADの発症が最も一般的なAPP、PS1/2、MAPTなどに密接に関連することに加えて、免疫シグナル経路におけるTREM2やコレステロール代謝経路におけるAPOEなどがGWAS研究においてもADの発症率と密接な相関関係を示しています。細胞骨格の局在化、エネルギー代謝、遺伝子発行調節などの経路にも、Aβの蓄積またはtauのリン酸化に影響を与える可能性がある多くの遺伝子改変があります。これらのシグナル経路およびそのうちのタンパク質とADとの関係を探求する余地はまだ多くあります。最も注目されているAβ抗体薬およびtau脱リン酸化薬は現在、成功した臨床例がありません。これは、AD治療の鍵は直接的な病理学的特徴の自体にあるのではないかもしれなくて、AβとtauはAD発症の「原因」ではなく「結果」である可能性が高いことを示しているようです。したがって、非伝統的疾患モデル遺伝子に関する研究は、AD治療の鍵となる可能性があります。

ADの影響経路および代表的な遺伝子

表1. ADの影響経路および代表的な遺伝子

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推薦文献:

1. Study Sciences (2021). Alzheimer’s Disease: Treatment, Symptoms, Stages, Causes and more. Retrieved from https://studysciences.com/what-is-alzheimers-disease/

2. Liu, PP., Xie, Y., Meng, XY. et al. History and progress of hypotheses and clinical trials for Alzheimer’s disease. Sig Transduct Target Ther 4, 29 (2019). https://doi.org/10.1038/s41392-019-0063-8

3. Alzforum. (2021). AD RESEARCH MODELS. Retrieved from https://www.alzforum.org/research-models/alzheimers-disease

4. Knafo S, Gouras GK, Yan XX, Spires-Jones T. Pathology of synapses and dendritic spines. Neural Plast. 2012;2012:972432. DOI:10.1155/2012/972432

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